この日はビバーク出発後、約185kmの舗装路走行の後、 CP2より本コースに入りました。舗装路は単なる移動手段としては使われず、前日と同様に舗装路なりのトレーニングが待っていました。

「メリハリのある走りをして。アクセル全開。」との先生の指示にて、アクセルをべた踏み状態にした私。いくら舗装路といいましても、所々路面が割れていたり凹凸もあり、また障害物等もありますので、車両は安定しません。もしここで少しでも車両に何かが触れれば車ごと吹っ飛んでいくでしょう。私はその恐怖の方が大きく、でも先生の言葉を信用しつつ自分のスピードコントロール限界に挑戦していきました。

この日のSSは前日とはうってかわって、非常に美しい景色が次から次へと現れました。コースの難易度も前日よりアップしており、起伏と変化に富んだSSが続きました。

途中、断崖絶壁を思わせる、高低差の激しい急激な2段階の下り路面があり、事前に先生より「この先コーション3の下りだからね。凄く落ちてるよ。急に落ちてるからね。ゆっくり行ってね。」の指示。私も心の準備をしつつ、ゆっくりとその落差の端に進みました。そこに着いた瞬間、壮大なる絶景がドーンと目の前に飛び込み、“うっわ〜!スッゴイきれいな景色!”の心の叫びと共に、右前方の何十メートルという遥か下に、その絶壁をクリアーし終えた2輪の選手が小さく見えました。絶景と落差の下に見える小さくなった2輪選手の姿にビックリしていると、助手席の先生からは「ゆっくり、ゆっくり。エンブレで降りて。」の指示。

私は暫くその景色に見惚れていたい衝動を抑え、自分で自分の首根っこを捉まえて一瞬外の世界にいた自分を現実の世界へ引き戻し、前走する車両の後を追って、先生の指示通りに車両をコントロールしつつ、一気に降りていきました。

その後も黄土色のDuneが続き、先生の指示通りのライン取りとアクセルワークにて、難なくDuneを越えていきました。中にはDuneに対し、自分は正面からアタックしようと考えていたところ、先生から「斜めから入ってくよ」の指示。その後続くDuneに対しても、半信半疑ながらも先生の指示通りに斜め斜めでアタックすると、途中スタックしている車両を横目で見ながらいつの間にか難所を越えていた、という事もありました。この時、ラリーにおけるナビゲーターの重要性を心底感じました。

また、この日のコースの中には、アメリカのモニュメントバレーを思い出させるような、何千年という地球の変化を感じさせる巨大な岩層群や、延々と続く石畳がありましたが、反面、360度見渡す限り障害物が何もなく、楕円形の地平線が延々と続く場面もありました。この時は、地球が丸いという事を身を持って感じましたし、その走行の姿は、正に地表を舐めているといいますか、自分達の車で本当に地球の表面を撫でている感じがしました。この場所では、アクセルを踏んでも踏んでも視界は変化しませんので、自分の目が寄ってきてしまうような感覚があり、自分の車が本当に動いているのだろうか、という錯覚に襲われたりもしました。

この日のSSの最後の方は、両サイドに大きな石が迫る、狭くも深く、多くのコーナーが存在する砂地であり、それまで幅制限のなかったコースから一変、細かいステアリング操作が要求されるコースでした。このコースで、車両を石に衝突させることなく、タイヤをパンクさせずに、またスタックすることなく走行できた時には、非常に爽快感がありました。かくしてCP2より残りのSSを全て走行後、競技車両と同様にリエゾンに入り、ビバークへと向かいました。

この日は先生の適切な指示のお陰で殆ど失敗なく走行しましたので、心の中では走行しながらも“楽しい!”コールが何度も沸き起こっていました。しかし、本当にラリーが楽しい!と感じたのも、この日まででした。

SS走行後、ビバークへ向かう車中、本日の走行で感じた正直な自分の胸の内を先生に話してみました。「(ラリーは)スッゴク楽しいですね。でもこれって先生がいないと走れないですね。先生に色々言われると分かるのですけど、自分だけでは全然路面の判断が出来ないです。」

実際、今日1日の走行では、自分は先生から路面情報を教えられ、先生の言う通りの走行方法をしていると、何の失敗もなく楽しく走れる状況でした。しかし逆に言えば、自分は先生の指示がなければこのアフリカの大地は危なくて1人では走れない、自分では路面の判断ができない、という状況でもありました。

この、何気ない私の発言を聞いてかどうかは定かではありませんが、この翌日から先生の指導方法がガラリと変わりました。

2日目の実際の私の総走行距離は462kmSS 244km、走行時間は約9時間半でした。

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104STAGE 2  Baharija-Dahkla
        競技総走行距離 472.75km SS 438km

ラリーが最高に楽しい!と感じた最初で最後の日