本日は数kmのリエゾン後、SSスタート地点より本コースに入りました。砂も大分深くなっており、日に日にSSの難易度も上がっていきました。そしていつしか気付くと、初日には恐怖を感じ、自分では絶対に無理と思っていた Dune越えを、難なくこなしている自分がいました。
 
 途中CP1通過後、暫く走行を続けていると前方にフランスチームの車両が止まっており、話を聞くと車両トラブルにて走行不能との事でした。まずは彼等の車両を舗装路へと救出しなければなりませんので、自分達の練習を中断し、約15km離れた舗装路までラリーカーを牽引しました。その後、再び本コースに戻り練習を再開しようと思っていたのですが、彼等が、このまま舗装路にてCP3まで移動し、サポートカミオンの整備を受けたいとのことで、引き続きCP3まで約75kmの距離を牽引し、移動しました。

CP3到着後、フランスチームと別れ、再び本コースに入りました。ラリー開始3日目ともなりますと、ある程度様々な路面に対しても慣れ始め、スピードが出せるようになると同時に、自分の課題も明らかになっていきました。

先生の指示も、前日までの細かいコマ地図の指示や走行指示から一転し、口数が少なくなっていきました。私は前日までに先生に教えられた通りの走行方法で、黙々と目の前のタスクをこなしていきました。

そんな黙々と走行する中、遂に先生が口を開きました。「現在の自分は、言われた事はできるし、ナビが指示すれば走れる。しかしナビに聞かないと何もできない。それでは何の意味もない。単なるレイドであれば、言われたままに走って、楽しければいい。しかし、今後私がラリーをやりたい、という事は、これからは自己責任で走っていかなければならない。ただスピードを出して走っていても仕方ない。今後どうしなければならないのか、自分で考えて走るように。」と言われました。

かくして、その後は自分で路面状況を判断し自分で運転を行うというトレーニング方法に変っていきました。

当時私は、スピードを上げた際のギャップ越えが上手くできずに悩んでいました。ギャップの越え方に関しては、最初は先生にその方法を教わり、低速走行の際には車両にダメージを与えずに行えていました。しかし慣れてきてスピードが上がりますと、車両はバッタンバッタンと跳ね上がり、上手くできません。

その度に、先生は席を替えてテクニックを教えて下さいましたし、先生の説明はとても分かり易く、理解もできました。しかし、いざ自分で走ってみますと、全くできません。

その時には、自分で考えて走るトレーニング方法に変わっていましたので、自分でブレーキの強さや踏むタイミングを変えてみたり、またアクセルワークについても同様に、色々と試してみました。しかし、自分で考えてやればやる程、ギャップ越えに失敗した車両はドッタンバッタン跳ね上がり、次第に頭の中がごちゃごちゃになって、自分ではどうしたらいいのか分からなくなって、思わずその場に立ち止まりたくなる事が何度もありました。

ギャップ越えに失敗しては車両がドッタンバッタン、自分でも思わず首をかしげてしまい、でも悩んでいても仕方ないですので再びアクセルを踏んで…という走行を繰り返しているうちに、先生が1つのヒントを下さいました。「ギャップに対して、どういう風に車両が入れば、車はダメージを受けないで済むの?サスペンションって衝撃を吸収する為にあるんでしょ?」と。

この言葉を聞いて、私は全く新しい言葉を耳にした気分になりました。

私はこれまでの国内でのトレーニングに於いて、サスペンションの動き、という事に関して考えた事は1度たりともありませんでした。トライアルでは、走行速度は非常にゆっくりですので、その動きは考えなくても分かります。しかし、私が耐久レースで習った事は、ブレーキングとアクセルのポイントとシフトチェンジのタイミング、加速方法について、そして何よりもスピードを出す事でした。耐久レースでは、ギャップに対しては跳んでいくのが当たり前でした。ですからレース中も、コースを選びつつも車両はジャンプして走るのが当然でした。この際に、サスペンションの動きなど考えた事もありませんし、実際にサスペンションの動きについて学んだ事もありませんでした。

私は、幼少時代からレースの英才教育を受けてきた訳ではありませんし、四駆を知っていてこの世界に入った人間でもありません。車に関する知識はありませんし、単にオフロードに興味があっただけですので、今まで色々な方に教えて頂いた事が自分の走行知識の全てでした。

こんな自分ですし、今までサスペンションの動きなどを考えた事もありませんので、突然それをやろうとしても出来る訳がありません。

私はこの数年間、海外ラリー参戦を目標とし、その為に周囲の方のアドバイス通りに国内にてトレーニングを積んでステップアップをしてきたつもりですが、実はこの国内でのトレーニングが必ずしも今回のラリーには結び付いていなかった、という事に初めて気付かされました。言い換えますと、少しそのトレーニングのポイントがずれていたといいますか、全く的を射ていなかったようです。勿論それらが無駄であった、とは言いませんが。

耐久レースでは一定時間同じコースを走りますので、ブレーキングのタイミングや加速のタイミングも毎回同じです。ギャップも跳んでいくことが許されます。しかし、ラリーではコースは常に変化しますので、その路面状況に合わせて自分でアクセル・ブレーキコントロールを行っていかなければなりません。いつギャップが出てくるかも分かりませんので、自分でそれを見て判断しなければなりませんし、そのギャップを跳んでしまったがために大事故に繋がり兼ねない事もあります。

先生からのこういった指摘により、ハッと我に返った気分になりました。それは、まるで長い間の眠りから覚めたような、そんな気分でもありました。

よってこの日より、自分の走行過程に於いて、“サスペンションの動きを考える”という事、また自分の頭で考えて走行する、単にスピードを出すのではなく、自分で路面状況の判断ができるスピードまで落として走行する、という事が要求され始めました。

3日目の実際の私の総走行距離は410kmSS 179km、走行時間は約10時間でした。

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105STAGE 3  Dahkla-Farafra
              競技総走行距離 402.55km SS 402.55km



ドライビングに対して、これまで考えもしなかった、

新たな知識に気付かされた日