エポニーヌの感動を出すためには、単に歌うだけではなく、エポニーヌの衣装をつけて、エポニーヌになりきる必要があるのしょうか。
ミス・サイゴンやレ・ミゼラブル本公演の時の美奈子さんの歌唱力は、特に迫力と感情の入れ方において、とても優れたものでしたが、同程度のミュージカル女優がいないとまではいかないと思います。しかし、2004年7月時点の歌唱は、私が世界中で聴いたどのミュージカルのどの歌声よりも心を打つものでした。
レ・ミゼラブル以外のミュージカルの話をすると、「王様と私」では、その後のクラシック系歌唱のはしりとなるソプラノ歌唱を身につけ始めた歌い方です。「十二夜」での歌い方は、ミュージカルというより、コンサートでの歌い方に近い歌い方で、「ララバイ」や「古い恋歌」をきれいに歌っていました。「クラウディア」の歌唱は、どちらかというと、ポップス系の歌い方の完成されたものという感じでした。2004年の時点では、美奈子さん、ポップス的な歌い方をする曲をあまり出していないので、「クラウディア」での歌い方は聴くチャンスがあまりありませんでした。
(5) ミス・サイゴン後のポップス
美奈子さんは、ミス・サイゴン出演後の1992年以降、しばらく、アルバムもシングルもリリースしていません。やっと、1994年になって、マーキュリーから、シングル
「つばさ」とつばさを含むアルバム「JUNCTION」をリリースすることができました。
JUNCTIONには、いろいろなタイプの歌が含まれており、一概にポップスとも言い難いのですが、まあ、ポップス系のアルバムでしょう。
「つばさ」は、例の30秒近くにもおよぶロングトーンが有名で、このことばかり強調されますが、この曲の良いところは、ロングトーンだけではありません。出だしから、一音一音丁寧に伸ばして、表情をつけながら、きれいに歌ってます。他の曲もそうですが、アイドル時代の歌い方にあった過度なビブラートとか、不自然な部分がなくなり、全体的に自然な歌い方になってます。細かいことを言うと、部分的にはもう少し自然に歌った方がいい?と思える歌い方のところもあるようですが、それ以降のポップス系の歌い方の基本となるものだと思います。