All Season 〜Kiss me〜
うららかな秋の午後。木漏れ日が、柔らかく降り注ぐ。
その中に。ひとり、まったく周囲の雰囲気に無頓着の人間がいた。
「なぁ。。ええやろ?軽くな、一回。」
「いやです。」
「なんでぇ。俺ら、恋人同士やん?キスのひとつやふたつ。減るもんじゃあるまいし。」
「真昼間から何言ってんの?信じられない。」
「ええっ。夜やったら、ええの?うわっ。、積極的やったんやねぇ。今晩、泊まりに来る?」
「・・・・・。さようなら。お元気で。」
私は侑士を置いて歩き出す。
「あっ、待ってぇな。っ。」
子犬のように私に付き纏い、前に後ろにと、まわりこんで喋り続ける。
子犬と言うにはデカイ。大型犬だけれど。やっていることは子犬以下だ。
ここ最近の子犬は。キスがしたいらしい。
人の顔を見ては『キスさせて』と哀願する。
始めのうちは赤面して、しどろもどろで断わっていた私も。最近は冷たい。
っていうか。なんで、いちいち聞くかな?
したけりゃすればいいでしょっっっっ!それは、心の中だけの声。
面と向かって『キスさせて』と言われて。
『はい。どうぞ。』なんて、おとなしく目が閉じられる人間じゃないことぐらい知ってるだろうに。
前に聞いたことがある。
『忍足は遊び人』出会ったその日にキスなんて当たり前の男だと。
だから。覚悟をしていた。そういう・・・恋愛関係のこともだけど。
すぐに他の女の子の元へ行くんだろうな。
浮気もいっぱいするんだろうな。
いつか、簡単に捨てられるんだろうな。って。
が。噂と全く違う忍足侑士が私の目の前にいる。
付き合って3ヶ月近くになってもキスもしない。(したいのは、したいらしいが。)
手を繋ぐだけで、バカみたいに喜ぶ。
触れれば、力加減が出来ないぐらい抱きしめてくる。
浮気どころか、私にベッタリ。全く、他の女の子と遊んでいる噂も立たない。
この人。なにかの『まじない』にでも、かかっているのか?
誰かに変な惚れ薬でも飲まされたんじゃないかと疑うほどだ。
枯葉を踏みしめながらの歩道。とってもロマンチックなのに。
「なぁ。。キスしよう?チョットやから。なぁ?」
チョットって、なによ?
チョットとチョットじゃないの違いって?
「好きなん、。俺、キスしたいねん。なぁ。。」
ああっ、もうっ。うるさいっ!
振り返る。
突然振りかえった私に。後ろについてきていた侑士が「おっと・・」と、のけぞった。
その侑士に近付いて、ネクタイを掴んで、ぐいっと引っ張る。
「あっ・・・ちょっ」
前のめりになった侑士に。私から、キスをした。
触れるだけの。チョットしたキス。
ぱっとネクタイを離すと。目を真ん丸くした侑士が固まっていた。
恥ずかしくて。すぐに背を向けて歩き出そうとしたら、腕を掴まれた。
「やだっ。もういいでしょ。」
憎まれ口をききながら、振り返ったら。
真っ赤になった侑士が片手で口を覆っていた。
げっっっ。赤面してるっっっっ。
どうして、照れるのよっ?あなた、遊び人じゃなかったの?
口元を押さえ、片手は私の腕を掴んだまま、へなへな・・・っと侑士がしゃがみこんだ。
「ちょ・・・大丈夫?貧血?」
「貧血・・・って。オモロイけど・・・今は笑えん・・・。」
「侑士?」
「なんちゅうことをしてくれたんや。」
「へ?」
「俺。」
「うん。」
「嬉しすぎて・・・どうにかなりそうや。」
言いながら、赤くなった顔で私を見上げ。もう・・・蕩けそうなほど幸せそうに微笑んだ。
途端に熱が頬に集まってくるのを感じる。
なに?この人。もうヤダッ。恥ずかしいじゃないっ。
「帰る。」
「ちょおっ。待ち。なんで、帰るん?帰さへんでぇ。」
ぐっと。掴まれた腕に力がこもるのをかんじた。
そのまま、ゆっくりと侑士が立ち上がる。満面の笑みで。
「お礼が、あるから。」
嫌な予感がした。
子犬だったはずなのに、急に大人の顔になるから。
男の顔で。じっと熱く、見つめてくるから。
もう・・・逃げられない。
kiss me
「kiss me」
2004.11.16
言い訳・・・。
病院の待ち時間があまりに長く。怒りのままに帰ってきました。
そして、そのイライラをぶつけるべく。甘甘、侑ちゃんで。どうだっ
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