All Season 〜シアワセな朝〜
めずらしく。目覚ましなしで、目が覚めた。
カーテンの隙間から差し込んでくる朝日に目を慣らし。
枕もとのメガネを取ろうとして・・・自由にならない右手に気がつく。
自分の腕の中に。大事な女の子が眠っている。
緩んでくる口元を隠す必要もない。メガネがなくても見える距離。
可愛い寝顔を見つめて、自分の肩にかかっている髪に頬ずりする。
自分が使っているシャンプーの香りがして、これがまた嬉しくて微笑む。
うわっ。俺、めちゃめちゃデレデレやんっ。
なんて、自分で突っ込みながらも。嬉しくて。幸せで。この気持ち、隠せるもんじゃない。
こんなに好きになれる女の子に出会えると思ってなかった。
大人ばかりの中で育ち。どちらかというと醒めた子供だった。
顔も声も、年よりは上に見られたし。大人びた雰囲気に、面白いように女の子は集まってきた。
不自由しない生活。勉強も、テニスも、そこそこ。女の子とも、そこそこ。
たいした努力を必要とせずに、うまく世間を渡ってきた感じ。
だからこそ。熱く燃えるものがなかった。
何に対しても執着がもてず、何かが足りない気がしていた。
『お前は、これ以上強くならねぇよ。そうだろ?
強くなりたいと思わない奴が、上にのぼれるはずがねぇ。才能の持ち腐れだっ』
練習試合で、跡部に負けたとき。俺に投げられた言葉。
腹は立たなかった。その通りだと思ったから。
いくら天才だともてはやされても。やる気のない俺が伸びるはずがない。
自分でも分かっているが、だからといってどうにもならない。ずっと、こんなふうに生きてきたから。
そんな時。俺の前に、が立ってた。
ちょっと、タイプの可愛い子。
彼女にしたらええな。それぐらいの軽い気持ちだった。まずは、友達から・・・。と、計画して。
なのに。いつのまに、本気になったんやろ?
気づけば、のことしか見えなくなっていた。
の顔を見るのが目的で、つまらん学校も楽しくなった。
笑顔が見たくて、一生懸命笑わせて。
の視線を独占したくて、休み時間も通いつめ。
が応援してくれるから、テニスだって頑張った。
自分のものにしたくて。誰にも渡したくなくて。必死になった。
好きで。好きで。好きで。好きすぎで、うまく気持ちを伝えられなくて。
変な遠回りもしたけれど。今、は俺の腕の中で寝息を立てている。
空いてる左手で、そっと前髪を掻き分けて。綺麗な額にキスをする。
途端に生まれる熱に眩暈がしそうだ。
ちょっと、意地っ張りで。素直じゃないところも多いけど。
ふとした時に見せる仕草、表情、言葉。それが、教えてくれる。
の気持ち。俺に向けられてる、の心。
可愛い恋人。
ずっと、俺の腕の中におったらええ。俺だけしか、知らなくていい。
左手で髪を撫でながら。額に。まぶたに。鼻の頭に。唇に。触れるだけのキスを落としていく。
瞬きと同じ数のキスをあげる。俺の一生をかけて。
思ってから。自分のクサいセリフに苦笑する。
の睫毛が震えた。
あ・・・お姫様のお目覚めや。
何度か瞬きして。ゆっくりと開いていく瞳。
段々と、瞳に映っていく俺。
完全に開いた瞳。けれど、すぐに細められて。
ほんわかと。幸せそうな笑顔に変わる。
「おはよう。侑士。」
小さな声に。なんでやろ泣きたくなった。
せやから、俺。また、言うねん。
「、好きや。」って。
バカのひとつおぼえみたいにな。
彼女が俺の腕の中で朝を迎えた。
それは、とてもシアワセ。
シアワセな朝や。
「シアワセな朝」
2004.11.21
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