All Season 〜バースデーテディ〜










「なぁ、なぁ。これ、見て。」



俺が出してきた携帯を見て、が眉を寄せる。
携帯ストラップ代わりに揺れているのは、ふたつのテディベア。



「なに、それ?」



あきらかに呆れている声で、が聞いてくる。



「これな。誕生日のクマなん。ひとつは、俺の誕生日クマちゃん。もうひとつは、。どうや?」


「どうって言われてもねぇ。」


「365日、種類がちがうんやって。の探すん苦労したんやで?
 コンビニで、しゃがみこんで探したんやから。」


「うわっ。恥ずかしっ。」


「なんやてぇ?せっかく、俺と。ラブラブクマちゃんにしようと思ってんのにっ」


「バカじゃない?乙女みたいなことして。女子高生じゃあるまいし。」



は、鼻に皺を寄せて、憎たらしい顔でいいはなつ。
酷すぎるっ。



「バカっていうたな?あのな、こうやって俺らのクマちゃんが絡まってるのに愛を感じんか?」


「別に?って・・・いうか、邪魔?携帯、使いにくそう。」


うわぁぁぁぁ。何で、こんな女が好きなんやろう。俺って、変やぁ。


「ちょっと、邪魔やけど。許容範囲やっ。あのな、ほら。こうやって、キスもできるん。」



クマとクマをひっつけて。キスさせてみたら・・・。



「変態っっっ」



バコッと、に頭を殴られた。





先に帰る。という、に。泣いて、縋って、待っててくれとお願いした。



の好きなシェイク、奢るからっ」



その言葉で、やっと頷いた彼女に。俺の愛は一方通行なんかな・・・と寂しくなったが。
学校近くのファーストフード店で待ち合わせをして、俺は部活に向かった。





部活が終わる頃には、もう暗くなっている。確かに・・・彼女を待たせるのは可哀相なのだが。
それでも、と一緒にいたい。ほんの僅かな時間でも、を見ていたい。


だから、我儘を言ってしまう。結局は、その我儘に付き合ってくれるのも・・・
の愛情だと信じてる。



「お先ぃーっ」


「あっ、侑士。もう、帰んのかぁ?」



部長の跡部が戻ってこないうちに帰る。そうしないと、アイツは小言が多いから。
ダブルスの相棒に、ひらっと手を振って、急いで部室をあとにした。



携帯をとりだして、にメールする。
送信してから、ぶら下がっているテディベアを見つめて。フッ・・と笑顔がこぼれた。
このテディベアみたいに、ずっと二人でいられたら、いいのにな。



は、また。『乙女みたいなことを・・・』って、嫌な顔をするだろうか?



「お待たせぇ。悪いな。遅うなって。大丈夫か?変な男にナンパされたりせんかったか?」


「もうすでに、変な男にナンパされてるから、大丈夫。」


「それ・・・誰のこと?」



は黙って、俺を見つめる。あっそう。やっぱり・・・俺。愛されてない?



約束のシェイクを奢って。取り留めのない話をする。
が、ケラケラ笑って。それだけで、俺はシアワセ。



「なぁ。待ってる間、何してた?」


「んー。買い物。ちょっと、探し物があったから。なかなか、見つけられなくて。」


「探し物?」



話してたら、の携帯が鳴り始めた。



が目で「いいか?」と聞くから。頷いてやる。
男やったら許さへんでぇ・・・と思いつつ、じっと観察することにした。



カバンから出してきた携帯。
見慣れた携帯に・・・。


俺は、瞬きも忘れて見いってしまった。


の携帯にぶら下がっている、ふたつのテディベア。俺と・・・おそろい。



「もしもし?」



話している彼女の手元で、テディベアは仲良く揺れていた。
買い物?探し物・・・って、これやったんか?



「ああ・・・うん。いるよ。うん。」



溢れてくる愛しさ。こういうとこ。は、めちゃ可愛らしい。
ぶっきらぼうに振舞うくせに、ちょこっと見せる本当の気持ちに。
俺は・・・もう。メロメロやん。


もう、好き好きオーラを出してる俺に。は、携帯を差し出した。



「跡部君から。」



え?



「跡部君がかわってくれだって。」


「ちょお、待ちっっ!なんで、跡部がお前の携帯にかけてくるんやっっ!どこで・・・番号を?貸せっ!」



シアワセ気分も吹っ飛んで、携帯をひったくって耳に当てる。



「跡部っ!どういうことやっ!明日の朝練?
 そんなことより、の番号をどこで聞いたん?っていうかっ!
 そんな連絡事項、俺に直接かけてこいっっっ!」



怒りまくっている俺を。


はテーブルに肘を付いたまま、ニコニコと笑ってみている。


それが、とっても幸せな笑顔で。


俺を見ている瞳が、優しくて。





怒りながらも。めちゃ、幸せだった。




















「バースデーテディ」

2004.12.10



















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