真田弦一郎改造計画 その2 〜改造計画始動!〜
次の週。またしても真田が居ない間に立海レギュラー人はテニス部の部室に集まっていた。
「では、真田弦一郎の恋愛成就プロジェクト実行委員会を始める。」
「たいそうな名前がついたのぅ。」
「部長の俺が命名したんだよ。何か異論があるかい?」
「いや、ないが。」
シンとした部室に緊張感が高まってきた。
「はじめに、各メンバーから情報の報告をしてもらおう。まず、ターゲット『』について。ジャッカル!」
「は、はいっ」
ガタガタと折りたたみ椅子の音を立てて、ついジャッカルは立ち上がってしまった。
そのまま小さく折ったレポート用紙を広げ報告を始める。
「か、彼女は成績はクラスで1番。学年では6番。えっと、生徒会会長と華道部の部長もしている。
現在付き合っているヤツはいない。これは隣の席の女の子が言っていた。以上。」
「待て、それだけか?それぐらいなら俺だって調べはついている。」
「え・・・あ、いや。他に、何を調べれば?」
「成績、所属クラブ。交友関係。他にも、住所、電話番号。身長、体重・・・それぐらいの基本データは既に入手済みだ。」
「そんなものをどこで!」
「秘密だ。」
しれっと答える柳。その場に居た人間に『柳を敵にまわすのはやめよう』と思わせるには充分だった。
ジャッカルは額から汗をダラダラ流しながら立っている。
「ジャッカルは、ダメ。」
幸村の駄目出しにガックリと椅子に腰を下ろすジャッカル。
丸井が気の毒そうにジャッカルの背中を撫でていた。
「次、仁王。」
「おう。二年になってからだけでも彼女に告白した男は分かっているだけで6人。中には生徒会の副会長も入っちょる。
他校の生徒からも告られたという噂もあるきに、十人以上からは口説かれたというとこか。
断わった理由はな、ニ年の始めは『誰とも付き合う気がない』じゃったが・・・ここ最近は変化しちょる。」
「ほぅ、興味深いな。どんな風にだ?」
「それがの『他に好きな人がいるから』じゃと。」
柳の目が一瞬カッと開いて皆は驚いたが、幸村だけは『へぇ〜』と笑っていた。
「本当に誰ともお付き合いしていないという事ならば、彼女は誰かに片想い中ということですね。」
(今、柳君が開眼してビックリしました。by柳生)
「そういうことだな。ふむ・・・これは重要な情報だな。」
「さすが、仁王。」
幸村に褒められて、仁王がホッとしたのが見て分かる。
反対にジャッカルは、ますます項垂れていた。
ジャッカルの落ち込みなど無視して、その後も刑事ドラマの捜査本部状態で報告と検討が行われた。
「まとめよう。彼女が誰かに片想い中なのは間違いないようだが、現在のところ相手は不明。
今は便宜上のため彼女が想いを寄せる相手を『X』としよう。
この『X』についての情報は全くなしだ。他校ということも考えられるな。」
ホワイトボードに大きく謎の男『X』が柳によって書かれた。
柳生は妙に胸がドキドキしてきた。なんだか本当の刑事ドラマみたいで、推理小説好きの血が騒いできた。
うーん、『X』が密室で殺害されたりすると真田君が容疑者になって楽しいんですが。
そう思ってから我に返り、ひとり罪悪感に青くなった。
「いいよ、『X』は消しちゃおう!」
幸村が明るく言って『X』氏に赤で大きなバッテンをつけるから、柳生は『殺すのか?』とパニックに陥った。
「消すといっても、どう消すのだ?幸村。」
「簡単だよ。彼女の心を真田で一杯にして、『X』には彼女の中から消えてもらう。」
「そんな簡単に行くんすか?俺から見て・・・お世辞にも真田副部長は女を口説けるような男に見えないっすよ?」
「それは百も承知。あんな、テニスしか頭にない朴念仁が女の子を口説けるわけがない。」
「幸村、言いすぎだ。」
「本当のことだよ?俺のオペが終わって直ぐ、まだ麻酔もろくに醒めてない時に真田がやってきて俺の手を取ったんだ。
副部長の真田には特に心配かけたし眉間の皺も増やしてしまったと、珍しくホロリとしたのに。
アイツときたら開口一番に『で、幸村はいつから試合に出られるんだ?シングルス1は無理だろう?
お前は2でいいな?』って言ったんだよ!
あまりのことに麻酔も一瞬で醒めたね。なにがシングルス2でいいな、だよ。俺より弱いくせに!」
そんなことがあったのか。
怖いもの知らずの真田も恐ろしいが、部長はもっと恐ろしいと部員達は震えた。
「と・・とにかく。『X』が我々の計画に障害となるのは必至だ。情報を集めると共に・・弦一郎を何とか、」
「なんとかとは、どうするんじゃ?」
「それは、」
「真田弦一郎改造計画だよ!真田を女を口説ける男へと改造するんだ。」
無理じゃないかな?口にこそしなかったが、幸村以外の全員が思った。
だが、幸村は端正な顔に天使の微笑を浮かべてウットリと続けた。
「俺たちが真田をイイ男に改造するんだよ。なんか、ワクワクしない?ねぇ?」
・・しない。また、幸村以外の全員は思ったが口にはしなかった。
「まずは、あの昭和40年代風の風貌を何とかしなくちゃ。あの髪型、どっかの公務員みたいだろ?
そうじゃなくても老け顔なんだから・・・カラーリングしたらどうかな?制服にキャップもダサすぎるよね。
言葉も侍じゃないんだから「うむ」とか「〜どる」とかは駄目だよ。『〜じゃん』とか『〜だしぃ』とか、
現代の言葉も使えるようにしなくちゃ。
あ、あとさ。直ぐに手を出すだろ?今はソフトの時代なんだから、殴るのは止めさせよう。
一回、誰かを殴ったら100円とか罰金とってさ、」
楽しそうに話し続ける幸村を他所に、柳は眉間を指で押さえて黙り込む。
仁王は明日の天気の事を考え始め、柳生は殺人を犯さないで済む事に安堵の息を吐いた。
ジャッカルは未だ浮上せず、丸井は腹が減った。
赤也は『誰かを殴ったら100円の罰金』に魅力を感じ、真田に殴られずに済む夢を見ていた。
それぞれの思いが交差する頃。
「ヘ・・・ヘックション!かあーっ、誰かが噂しているのか?きっと赤也だな、たるんどるっ」
真田は止まらぬクシャミに苛々しながら部室に向かっていた。
女を口説ける男に改造されるとも知らずに。
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