「柳生は丁寧すぎるから、バツ。」
「バツ・・・ですか?なんか傷つきますね。」
「仁王は訳の分からない方言だから論外。」
「訳が分からんとは失礼な。」
「丸井は語尾の『だろい』が違う気がする。」
「何がどう違うのか説明しろい!」
「ジャッカルは日本人じゃないから、除外。」
「待て!俺の日本語は完璧だろっ」
「赤也は『べらんめぇ調』すぎるし、真田がおとなしく言う事を聞くとは思えない。」
「俺も遠慮するっス」
「柳は真田と同類、類は友を呼ぶだな。使えない。」
「俺の言葉遣いに何の問題がある?」
「良く考えたら、うちの部には今時の言葉を使えるヤツが一人もいないじゃないか!」
「テニスと言葉遣いは関係ないからな。それより彼女は時代劇ファンなのだろう?
弦一郎の話し方を改造する必要もないと思うのだが?」
チッチッチッチッ。幸村が長くて細い指を顔の前で左右に振った。
こんな華奢ななりをして、テニス、性格共に最強なのだから恐ろしい。
「いくら時代劇が好きでも、普段から『うむ』とか『たわけっ』とかサムライ言葉で話されてごらんよ。
はじめは楽しいかもしれないけどさ。サムライ語を喋るカレシを友達に紹介する気にはなれないと思うよ?恥ずかしすぎる。」
「まぁ、確かに古めかしい言葉だとは思いますが。乱れた日本語を使うよりは好感度が高いのではないですか?」
「いや。俺は真田に『〜だぜ』とか『マジ、ヤバッ』とか言わせてみたい!」
それは単に面白がっているだけだろう?
その場にいた殆どが心の中で思ったが、幸村の言う事なので誰も何も言わなかった。
ただ一人。真田と同類といわれた柳が静かに落ち込んでいたのだが、表情が変わらないので誰にも気づかれていなかった。
真田弦一郎改造計画その4 〜ミッション2 言葉遣いを改造せよ〜
「真田。今日から俺は、お前の言葉遣いを今時の若者が使う言葉に直すことにする。」
「なに?言っている意味が分からんが?」
「それだよ、それ。『分からんが』が、オヤジくさい。そういう時は『意味が分かんねぇし』って言うの。」
「お前が言っても違和感を感じるが。突然、何を思ったのだ?
お前のことだ、また突拍子もない事を思いついたのだろう?俺は乗らんぞ。」
「俺は、お前のことを思って言ってるんだ。そのままではサムライと間違われるぞ?」
「ははは、本望だ。では、先に練習に行く。じゃあな、」
「待てって」
全く自分を相手にしない真田の腕を幸村が掴んだ。
部内に適任者がいなかったため、わざわざ部長である自分が出張ってきたのだ。
ここは、なんとしてもミッションを成功させなくては。
「いいか、真田。このままでは、お前は女に一生もてない。
サムライだ、オヤジだと後ろ指を差されているうちに歳をとり、たった一人で老後を迎えることになりかねないだろ?
だから俺が今のうちに何とかしてやろうと親切で言ってるんだって。」
「幸村、言っていることが可笑しいぞ。後ろ指を差される道理がないだろう?
それにだ。別に、お前に老後の事まで心配してもらう必要はないし、
そんな今時の乱れた言葉を使えば幸せな老後が待っているとも思えん。」
「真田!部長命令にするぞ。」
「そんな馬鹿らしい命令をきく気はない。では、先に、」
「馬鹿は真田だよっ!人がせっかく、モテモテ男にしてやろうと思ってるのに。」
「モテモテ男?なんだ、それは。だいたい、馬鹿とは心外だ。この前の中間テスト、俺は幸村より上だったぞ。」
「あーっ、そんなこと言うんだ。だったら言わせて貰うけど、俺はテニスの腕は真田より上だよ。」
「なに?聞き捨てならん言葉だな。五分だろう?」
「違うよ、俺が123勝してる。」
「俺は121勝。2つ分の負けは、たまたまだ。お前に劣っているとは思ってないぞ。」
「2つでも真田が負け越しているには間違いない。」
「なんだと?なら、今すぐ五分にしてやろう。」
「ふふっ、やれるもんならやってみれば?」
「望むところ!」
二人の目がキラッと光る。睨みあいながら、お互いがラケットを手に取った。
背中に燃えるオーラを漂わせて、立海のテニス部部長と副部長が肩を並べてコートに向かう。
その異様な威圧感に、他の部員達は身が震えた。
そんな二人を後ろから見ていたレギュラー陣は、やれやれという顔だ。
「あーあ、予想通りの展開になったのう。」
「二人が試合を始めたら長いですからね。今日はもう部活になりませんよ。」
「あれ、赤也は?」
「ジャッカルの前方ななめ45度にいるだろい。ほら、一番いい場所を確保してる。」
赤也は、さっさと嬉しそうに審判台によじ登っている。
柳は溜息をつきながらもデータを取るためにノートを出してきた。
「滅多に見られない頂上対決だからな。赤也には、いい勉強になるだろう。だが・・・」
「だが、なんじゃ?」
「幸村は完全に当初の目的を忘れているな。」
「ああ、忘れとるな。」
「今日もミッションは失敗か。」
「そうやなぁ。真田は、なかなかに手強いの。」
「弦一郎が手強いというよりは・・・幸村に問題がある気がする。」
「・・・まぁな。」
柳と仁王は思った。
部長 幸村精市を改造した方がいいのではないか?と。
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