キミとボクの距離 〜ジャッカル編〜 4










好きなのだと、とうとう自覚してしまった。
そうするとジャッカル君を目で追うことが以前にも増して多くなり、彼の些細な仕草や表情に感情が左右される。
視線が合うと彼が笑ってくれるのが嬉しくて、それでいて落ち着かない居心地の悪さを感じている。
彼女はやっぱりジャッカル君の傍にいて、今日も普段通りに笑って話していた。


丸井君と付き合ってるのに、あんなにジャッカル君と仲良くしてていいのかな。


少し嫌な思いで彼女を見ては、自分の性格の悪さに気持ちが沈む。
彼女は明るくて、元気で、他の男子にも同じ態度なのに。


ジャッカル君がかわいそうと言い訳しながら、彼女に向ける私の想いは『嫉妬』でしかなかった。
目立たない私にも声をかけてくれるのが彼女なのに・・・私はとても嫌なコだ。



、最近なんか元気ないね。どうしたの?」
「え?ううん、なんでもないよ」


「そうなの?なにか悩みがあるんなら聞くよ?」



傍目から見ても落ち込んでいるのか、友だちに心配されてしまった。
自分が情けなくて、悲しくて、でもジャッカル君の姿を見るとドキドキして。
なにをどうしていいのかも分からない私はイッパイイッパイだった。



「なんかもう・・どうしていいのか分かんなくなっちゃった」



呟けば、勝手に涙が溢れてくる。
突然のことに目を丸くした友だちだったけど、すぐに私の背中を優しく撫でてくれた。



『桑原が本当に好きだったかどうかなんて分かんないよ?
 もしそうだったとしても、今がチャンスじゃない。が頑張んなきゃ』


『そうそう。彼、優しいしさ。が頑張れば、きっとうまくいくって。私たちも協力するし』



明るく励まされ、そうなのかなと少し思えるようになった。
だけど今まで誰かに告白などしたこともないし、この私にそんな大それたことができるのか自信がない。



『いきなり告るのは無理でもさ、一日一回以上は話しかけるとか』
『そうだよ。から話しかけられても桑原なら答えてくれるって』



親身になって皆が考えてくれて、ガンバレって言われた。
家に帰ってからも、ジャッカル君に近づく作戦や励ますメールが届く。


ベッドに入ってから、天井を見上げて思った。


彼女のことは気にしない。
自分の気持ちを大切にして、少しでもジャッカル君に近づけるよう頑張ろうって。










「この前の人、可愛いっスよね。俺、告ろうかなぁ」
「カレシがいるらしいぞ」


「マジっすか?」



からかうような口調の赤也にロッカーで話しかけられ、俺は溜息まじりに言い返す。
口にするたび落ち込むんだから言わせないで欲しい。



「ジャッカル先輩、そんなことでいいんですか?ここはガツッといかないと」
「なにをガツッといくんだよ。だいたいなんでにこだわるんだ、お前」



もうの香りも消えてしまったジャージを羽織って訊ねれば、赤也の奴は『なにを今さら』みたいな顔をした。



「ジャッカル先輩、あの人のこと好きでしょ?バレバレっスよ」



俺は思わずロッカーに額をつけて、大きな溜息を吐いた。
学年も違う赤也が見ただけで分かるほど、俺の気持ちはただ漏れなのか。
なら、だって気付いているかもしれない。
カレシもいるのに俺みたいな奴に好かれたって迷惑だろうに。


考えれば考えるほど暗い気持ちになる。
そんな俺の背中を誰かが思いっきり叩いた。


あまりの痛さに飛び上がり、背を逸らすとブン太の大きな瞳があった。
不機嫌を隠しもしない顔で俺を睨んでいる。



「な、なんだ?」
「情けなくて見てらんねぇ」


「は?」
「なんもしないうちから諦めて、落ちこんでんのが情けないって言ってんの」



ジャージの腰に手をあて、ブン太が吐き捨てるように言う。
その迫力に赤也が一歩うしろに下がった。



「試合の時、俺が諦めてたらお前は言うだろ?諦めるなって、まだ負けたわけじゃないって
 そう言って、どんなボールだって拾って、拾って、拾いまくるのがジャッカルだろ?
 なのにコートに立つ前、それも対戦相手さえ分かってねぇ時点で負けてるなんて情けねぇったらありゃしない」



挑発的な物言いのブン太を前に、俺は言い返す言葉もなくて拳を握りしめる。
テニスと恋は違う。喉まで反論が出かかっているのに、どこかでブン太の言う通りだと分かっていた。


俺は逃げている。
傷つきたくなくて、自分の容姿やに誰かがいることを理由に一歩が踏み出せない。


ぐっと唇を結んだ俺の表情にブン太が瞳を和らげた。
そのまま俺の肩に腕を回し、遠慮なく頭を擦り寄せてくる。



「ふられたっていいじゃんか。何度でもOKもらえるまで告ればいいんだよ」
「な、そんなこと」


「好きなんだからよ。好きなうちは何度だって、好きだって言えばいいだろ?」



ブン太は明るく言って、俺の肩を痛いほど叩く。
隣りで赤也が「無茶苦茶だなぁ」と呟いてた気もしたけれど、俺は少しだけ気持ちが前向きになるのを感じていた。



どんなに強い相手にだって、ゲームセットの声を聞くまで諦めないのが俺たちのテニス。



テニスと同じで諦めなければ、キミとの距離も少しは近くなるだろうか。




















キミとボクの距離〜ジャッカル編〜 4

2010/07/30




















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