キミとボクの距離 〜ジャッカル編〜 6
『だから、えっと・・・ちゃんって誰か付き合ってる人っている?』
『い、いるよ』
彼女に嘘をついた。
ジャッカル君への恋心を悟られなくて言ってしまった嘘。
ああ、罰があたったんだ。
ジャッカル君がどう思ったのか考えただけで胸が潰れそうになる。
自分のついた嘘に後悔をしても、もう消してしまうことはできないのだ。
昇降口まで逃げた私を心配した友だちが追いかけて来てくれた。
何があったのかと皆が訊いてくれるけれど答えられない。
だって・・・私が悪いんだもの。
きっとジャッカル君に嫌われてしまった。
涙がボロボロと零れていった。
青天の霹靂という日本語は、こういう時に使うのだろうか。
俺は馬鹿みたいに口を半開きにしたまま、と仲のよいクラスメイトに詰め寄られていた。
途中からは教室に来るのが遅いと俺を迎えに来たブン太たちまで加わり、俺はうろたえるばかりだ。
「に付き合ってる人なんていないよ?なのに泣かせて」
「いや・・しかし」
「コイツが訊いた時は、付き合ってる人がいるって言ったんだとよ」
ブン太が自分の隣に立つ彼女を親指で差した。
戸惑いながらも頷いた彼女だったが、何か考えるような表情をするとの友人たちに訊ねる。
「ね、ひょっとしてジャッカルと私のこと」
「は付き合ってるって思ってたみたい。だからホントの事が言えなかったんだよ。それは後で違うって分かったんだけど」
そう言って、と仲のいい女子はチラリとブン太に視線を流す。
「ほら、見てみろ。お前ら仲良すぎんだよ。俺が勘違いしても仕方がなかったんだ」
こんな時にブン太が胸を張って言いだす。
俺と彼女の仲を疑って理不尽な怒りをぶつけた時の事を言っているらしいが、俺たちの間には本当に何もない。
彼女と俺は困ったように顔を見合わせるしかないのだが、それにもブン太は嫉妬して口をとがらせる。
「お前さ、誰にでも優しいのは罪だぞ」
「罪って言われても」
「とにかく確認。にカレシはいない」
うんうんと女子たちが頷く。
「カレシのいないがジャッカルにお守りを渡そうとした。神社の娘でもないかぎり誰にでもお守りを配るとは思えない」
俺は困惑するが、ブン太は嬉しくて仕方がないという表情だ。
「ということはジャッカルのため、特別にお守りを買ってきたというわけだ。ハイ、そこで考えられることは?」
ブン太が回答を促すかのように俺の前に手を出す。
周囲の人間も正解を期待するかのように俺を注目している。
俺は汗がふきだしてくるのを感じながら、混乱の極みに達している頭の中から答えを導き出す。
「ま・・まさかと思うが。は、その・・・俺のことを?」
疑問形になってしまったが、ブン太は人差し指をたて「ピンポーン、だよな?」と周囲を見渡した。
膝の力が抜けて俺は蹲ってしまった。
どうすりゃいいんだ。それしか頭の中にはない。
『には付き合ってる奴がいるって・・・』
そう零した俺を見たの表情は、今にも泣きださんばかりだった。
嬉しいよりも襲ってくる罪悪感に押しつぶされて、俺は低く唸る。
「痛っ」
突然に走った背中の痛み。
それはブン太が俺の背中を思いっきり叩いたせいだ。
「なにやってんだ。落ちこむのは後だろぃ。早く行け!!」
「ゴメンね、私のお節介で余計にこじれちゃって。お願い、追いかけてあげて」
ブン太と彼女に言われ、俺は立ち上がる。
そうだ。俺は何も言ってないし、何もしていない。
があんなにも恥ずかしそうに差し出したお守りも受け取ることができずに。
「悪い、ブン太。絶対に後で部活に行くから」
「ほいほい。真田には腹が痛くて遅れるって言っとくさ」
ニコニコと笑うブン太に頷き、俺はを追って走り出した。
キミとボクの距離〜ジャッカル編〜 6
2010/09/21
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