キミとボクの距離 6
部活、どうしようかな。
涙は止まっても、濡れた頬は乾いてピリピリしている。
抱え込んだ膝に額をつけて溜息をつく。
ブン太に会ったら、どんな顔をすればいい?
「」
反射的に顔を上げてしまった。
聞き間違えるはずがない、ブン太の声。
声のした方に向くと、体育館の端に後ろ向きの肩だけが半分のぞいていた。
「あ・・えっと、今はあわせる顔がないっていうか、だからこのままで・・・ゴメン」
ブン太の髪が薄茶に透けて僅かに見える。
あんなことがあった後なのに、ブン太の声を聞くだけで鼓動が速くなってしかたない。
胸元を掴むようにして、ブン太の肩を見つめた。
「さっきは・・その・・無理やり悪かった。俺、どうかしてた。ほんと、ゴメン
ゴメンばっかだし、お前にはワケ分かんないコトだったろうけど・・俺には意味があったんだ
その意味っていうのは、その・・ああ、くそっ」
ブン太が苛々と髪をかき上げる。
こんなにも言いづらそうに話す姿は見たことがなくて、私だって何も言えない。
「とにかく腹が立ったんだ!!
俺の居ない所でジャッカルとお前が仲良さそうにしてるのに、すげぇムカついた
お前に触れたジャッカルと触れられて笑ったお前に・・・めちゃくちゃ腹が立ったんだ
コイビト同士みたいなお前たちの姿が許せなかった!!」
「わ、私とジャッカルはそんなんじゃ」
「好きじゃないのか?」
畳み掛けるように問って、ブン太が僅かに顔を横に向けた。
視線は合わなくても、ブン太が全身で私の答えを待っているのが分かる。
「す・・好きだよ」
ブン太の肩が揺れた。
「だって友達だよ?いつも優しくしてくれて、励ましてくれる大事な」
「とも・・だちなのか?」
「そ、だよ」
ブン太が目に見えて大きく息を吐く。
また前を向いたブン太が肩に力を入れたのが後ろから見ても分かった。
「なら俺のことは?」
好きだよ。
話の流れなら、ジャッカルと同じように『好きだよ』と言ってもおかしくない筈。
だって大事な友達だものと笑って言えたなら、元通りになれるかもしれなかった。
なのに私は声を失ったみたいに唇を震わせるしかできない。
好きな人に好きだと言うことが、こんなにも苦しいことだなんて。
「いや、待って。やっぱいい。お前の気持ちはカンケーないや」
かん・・けい・・ない?
切り捨てられたような言葉に目の奥が熱くなる。
もう私なんか関係ないんだと俯いた時、ひときわ大きくなったブン太の声がした。
「俺はお前が好きだから」
俺はお前が好きだから。そう言葉にしたら、ものすごくスッキリした。
難しい問題が解けたみたいな、大事な失くし物を見つけたときみたいな・・・そんな感じだ。
誰が好きなんだって何度も聞いてカッコ悪いったらないじゃないか。
ウン、俺が好きなんだ。
好きの違いはウマく言葉にできないけど、俺の中では分かったから。
だからダイジョーブ。今度は間違わない。
俺は体育館の壁に背を預けて口を開いた。
「今、答えはいらない。俺は答えを聞ける立場じゃないし
お前、怒ってるだろうし、突然にンなこと言われても困るだろうし
お前だって好きなヤツぐらいいるかもしんねぇし
けど・・俺は誰にもお前を譲る気ねぇから」
俺、やっぱ身勝手だよな。
はどんな顔して聞いてんだろう。顔を見ながら話さなくて正解だった。
めちゃ怖くて心臓が壊れそうだ。
あのコに告った時には、そんなことなかったのにな。
なぁ、俺の本気。
お前には伝わってるか?
自分のしたことにカタをつけたら、そん時は
「全力でお前を奪いに行く」
晴れたり、曇ったり。
時には雨も降る。それでも雲の上には青空があるんだ。
ぜってぇ・・諦めない。
キミとボクの距離 6
2010/04/12
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