キスして良いのは貴方だけ 3
確かに酔ってました。
酔ってなきゃ、あんな考えもない大胆な行動を僕がとれるはずもない。
途中からは酔いなんて醒めていたんです。
頭の中にあるのは、とにかく君を離したくないだけだった。
キスは酔った勢いでした。
けれど、それでハッキリした。
僕の中に残っていた恋心は今も生き続けているってことがです。
君は躊躇いがちに俯いたままで僕についてきた。
何度も逃げ出したそうにしていたけれど僕がそれを許さなかったんです。
あの夜・・もしも君が抵抗を見せたなら、
僕は犯罪までも犯してしまいそうなほど君が欲しかった。
異常なほどの僕の執着が怖かったのかもしれない。
君はおとなしく僕に抱かれてくれた。
辛そうに眉を寄せた君の表情は見て見ぬフリをして、それでいて僕は歓喜に震えていたんです。
この一度で君が僕の子供を妊娠してくれたなら・・・とまで思った。
浅くしか眠れなかった僕の隣で、君が声を殺して泣いているのに気付いたのは夜明け前。
後悔しているのだと直ぐに気付きました。
唇を噛むようにして僕は寝たふりを続けました。
君がどんなに後悔しようと僕は君を手放す気がないからです。
時間をかけて、僕を好きになって貰えればいい。
高校生の僕には出来なかったゲームメイクも、今の僕なら出来るはずだと思いました。
僕だって無駄に何年も生きてきたわけじゃない。
君以外の人と出会いや別れを繰り返して、少しはスキルアップしたはずだと思った。
なのに、どうだこれは。
本気で愛した人の前に立つ僕は愚かで未熟な恋愛初心者でしかなかった。
「観月クン、あの・・・昨夜の事は忘れて?」
「忘れる?」
「酔ってたし・・・」
目覚めた朝に素早く身づくろいした君の第一声に僕はカッとした。
冷静なようでいて僕は熱くなりやすいと事務所の先輩にも注意されているのに、そんなことは頭から抜け落ちている。
腕に抱いたはずの君が一夜で去って行こうとしているのに冷静でいられるはずもなかった。
「なに言ってるんです。酔っていようが、いまいが、自分のしたことに対する責任は持ちます。」
「責任なんて、そんなこと。」
「これから僕たち付き合いましょう。
幸い君には決まった人もいないようだし良いでしょう?」
君の瞳が揺れる。
躊躇いなのか、後悔なのか、君の心が僕には読めない。
それでも・・・このまま君を帰すわけにはいかなかった。
強引に絆を結んだ僕の恋人。
どうしようもなく好きなんです。
喉まで出かかっている言葉は、君の伏せた瞳を前に音にはならない。
なにを望んでも君は静かに頷くだけ。
メールも電話も、デートの誘いも全て僕から。
君から誘われることなどない。
「このクリスマスにデートをキャンセルしたら絶対にフラれるよ。
この前もさ、依頼人と私どっちが大事なのって訊かれてマイッタよ。」
「うちなんかさ、子供が俺に人見知りするんだぜ?
隣に住むジィさんに懐いてて、なんで父親の俺に人見知りするんだ?ありえないよ。」
隣で同僚たちが話しているのを横目にメールチェックをする。
君からのメールは来るはずもないと思いながらも探してしまう自分に嫌気がさしてきた。
「観月の彼女はどうだ?お前が愚痴ってるのを聞いたことがないな。」
「何も言いませんからね、彼女は。」
「できた彼女だな。黙って待っててくれるコなんて理想だよな。」
「僕は皆さん方の方が羨ましいですよ。ちょっと出てきます。」
きょとんとしている同僚に告げて、ノートパソコンの電源を落とした。
僕は聞きたい。
君の我儘や愚痴、僕を責める言葉、なんでもいいんです。
僕を求めてくれる言葉なら、なんだって欲しい。
僕は君が好きだ。
そして、君にも僕を好きになって欲しい。
想いは君に届いてない気がして・・・自分がもどかしい。
「もしもし?僕です。今、時間はいいですか?ええ。
実は・・・クリスマスも仕事になってしまったんです。」
それは賭けだった。
キスして良いのは貴方だけ 3
2007/12/07
フェードインする恋心
ザコは相手にしないプライド
リードする時は、いつもさりげなく
キスして良いのは貴方だけ
スルーされた告白の行方
お題 キミにうたう「すき」のうた 様より
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