SA.KU.RA.N.BO 〜君に会いに来た〜










外は雨が降っていた。
しとしとと降る雨は、窓際からポツポツと規則正しい音を響かせる。



日曜日の午後。



家族のいない家で独り、ぼんやりとしていた。



英ニクンは雨でも部活。
屋内でトレーニングに励んでる。


もって生まれた運動能力と天才的なプレー。
でも、それを支えているのは、もの凄い練習量の努力だ。



何週間、デートしてないかな?
昨日は短い電話だけ。よほど疲れていたのか、英ニクンは電話の途中で寝てしまったの。



ありがとう。本当はすぐ寝たいのに電話してくれたんだよね。
部活の合間にもメールを送ってくれて


『大好きだよ!』って必ず書いてあるの。


私ね、とっても幸せ。・・・の、はずなのに。



会いたいな。


傍に・・・いて欲しいな。


ほんの少しでいい、英二クンを独り占めしたい・・・って。



我儘な心が言うの。
片想いしてた時より、なん十倍なん百倍も幸せなはずなのに。



もっと、もっと、って欲張りになる気持ち。



こんな感情。ほんの少し、辛いの。





ピンポーン。



下から呼び出し音が聞こえた。
誰だろう?荷物かな?なんて思いながら階段を降りて行く。



居間のインターフォンを取るより早いと、玄関で『どなたですか?』と声をかければ。



「俺!」



嘘・・・、スコープから顔を確認することもせずに鍵に手をかけた。
慌てて玄関のドアを開けば、赤のビニール傘を手に立っている英二クンがいた。



「ど、どうしたの?」


「へへ、ゴメン!突然。」



英二クンは照れたみたいに頭をかいて笑う。



「あ・あの、あがって?誰もいないから。えっと、あの・・部活は?」


「あのさ、」


「うん。」


「俺、」


「なに?」



英二クンを玄関内に入れようと促すのに、
彼は傘をさしたまま何かを言おうとするから、私も立ち止まって言葉を待った。



「俺、に会いたくて。なんか、めちゃ会いたくなっちゃってさ。
 そしたら、もう何にも考えられないくらい、頭の中がばっかりになっちゃって。
 でね、大石に無理言って。手塚に嘘ついて・・・帰ってきちゃった。」


「英二クン・・・」



真っ直ぐ見つめてくる英二クンの目は、いつもの明るい色じゃない。
真剣で・・・痛いほどに切実な痛みを感じさせる瞳の色だった。



「ね、。抱きしめても・・・いい?」



私は黙って頷いた。
英二クンも黙って傘を閉じ、玄関脇に立てかけると中に入ってきた。
静かに玄関のドアを閉めて、ゆっくりと私の方に振り向く。


肩にかけてあったテニスバックを降ろすと、笑顔もなくジッと私の顔を見つめてきた。



その瞳が語るもの。ねぇ、英二クン、私に教えて?



伸びてきた手が私の肩を掴むのと同時に力任せに引き寄せられた。
ドンと、ぶつけられたかのように英二クンの胸へと抱きしめられる。


いつもの、ふんわりと包み込むような抱擁じゃない。
ふざけたみたいにじゃれてくる抱きつき方でもない。


すべてを自分に閉じ込めてしまうかのような、激しい抱きしめ方に息が詰まる。



「本当に会いたかったんだっ!
 会いたくて・・どうしようもなく・・・会いたくてっ」


「英二クン、」


「また明日会えるの分かっるのにっ、でもっ・・・会いたかったんだ!」


「うん・・・私も。私もだよ、」



英二クンの体からは雨の匂いがした。
その匂いもすべてが愛しくて。





寂しいのは。会いたかったのは。



わたし・・・ひとりじゃなかったんだね。





私たちは固く抱き合って。


思い出したように名前を呼び合い、想いを確かめ合った。








ねぇ、もうしばらく、こうしていよう?




この雨がやんでしまうまで。




ずっとずっと、抱き合っていよう。








大好きだよ。





英二クンの優しい声を聞きながら、私は幸せに目を閉じた。





ねぇ、雨よ・・・やまないで?





















「君に会いにきた」  

2005.07.15  

雨の休日って、人恋しい。




















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