SA.KU.RA.N.BO 〜骨折り損〜








俺の親友は恋をしている。
高校生だし。まぁ、当然。好きな女の子ぐらいいても、いいだろう。


だけど、周囲を巻き込まれると迷惑以外の何者でもない。



「ねっねっ、大石!聞いてくれた?」



部室に入るなり、抱きつかんばかりの勢いで飛び掛ってくるエージを受け止める。
クルクル大きな瞳を輝かせて、期待いっぱいなのが見て分かる。
エージの想い人と俺は同じクラス。
で、早速の情報収集係りにされてしまった。


乾に聞けば?とも言ってみたが。
どうも・・・乾に弱みを握られるのは我慢ならないらしい。



「一応な。」
「やりぃ♪さすが、大石!で、でっ、いつ?いつ?」


「5月25日」
「ひょおぉぉぉ。いい季節だにゃあ♪」


「・・・そうか?」
「それで?それで?血液型は?」


「A型。」
「やったぁ!一緒だよっ!大石っ」


「・・・そりゃ、良かった。」
「でっ、他には?」


「犬が好きらしい。コーギーを飼っていると言ってた。」
「うんうん。可愛いよね。俺も好きだにゃあ。」


「お前・・・この前、コーギーは嫌いだって言ってなかったか?」
「んにゃ。まさか!」



呆れ顔でエージを見つめるけど、全く意に介してない。



「でっ?他には?」


「好きなの食べ物はメロンパン。クローバーのグッズが好きで集めている。
 結構、アニメとかも見てるらしい。お気に入りの声優について、楽しそうに話してたな。
 兄弟は姉と弟。エージのとこほどじゃないけど、兄弟が多いよ。
 弟は青学の中等部にいるらしい。
 えーっと、他には。ああ、スマ○プの草○剛が好きだと言ってたかな。
 映画とか見に行ったって言ってた。
 ああ、なんとか・・・っていう映画を見てみてと言われたけど。
 なんか興味がない映画だったな。それと・・」



俺はエージの想い人から聞きだした情報を一生懸命思い出して聞かせてやった。



だから、気づかなかった。
いつの間にかエージの相槌がなくなってて。
不穏な空気を身に纏っていることなど、全く。



「身長が高いのがコンプレックスとか言ってたけど。164センチだって言うから。
 それぐらい気にすることないよ、って言ったら喜んでたな。それと・・・」


「もういいよっ!」


「エージ?」



大きな声にエージの顔を見れば、不機嫌を隠さない顔があった。
?マークを飛ばしつつ、エージの顔を覗き込んだら、フイと視線を外される。



「な・・・なんだ?どうした?」
「そんなにいっぱい、ちゃんと話したんだ。」


「え?」
「俺のいないところで。そんなにいっぱい話して、仲良くなったんだっ!」


「いや・・・仲良くって。俺はエージのために会話を振って・・・」
「俺なんか。挨拶ぐらいしかしたことないのにっっっ酷いよっ大石っ!」


「エージ、落ち着けって。」
「大石もちゃんが好きなんだ!酷い、いくらちゃんが可愛いからって!
 先に好きになったのは俺だかんねっ」



どうして・・・こんなことに。
困惑を通り越して目眩すら感じる。
俺は拗ねてるエージの肩を両手で押さえ、言い聞かせるように言ってやる。



「エージ。俺はさんはタイプじゃないし・・・好きでもない。
 第一、エージの好きな人を俺が横取りするわけないだろ?」


「なんだよっ、タイプじゃないって。ちゃん、可愛いだろ?俺の趣味が悪いって言うのかぁ?」


「いや。可愛いよ。笑うと・・・こうエクボが出て。でも、だからって。」


「エクボっ?そんな近くでちゃんと話したのか?
 それに、やっぱ可愛いって思ってるじゃんかぁぁぁぁぁ」


「・・・・・・・・・・。」



エージは涙目になって俺をにらみつけている。
いや・・・泣きたいのは俺のほうだけど。



助けを求めるように、黙って聞き耳を立てていた不二に視線を向けたが、
肩をすくめてニコニコと食えない笑顔を浮かべるだけ。
その後ろに立つ手塚にいたっては、完全無視だ。



おい、誰か助けてくれよ!



「もうっ、大石とダブルスは組めないかも。」
「ちょっ、エージ。それは、飛躍しすぎだろ?」



焦る俺を上目づかいに見て、エージ。



「じゃあさ、じゃあさ。俺とちゃんの仲を取り持ってよ。」
「へ?」


「毎日、大石のクラスに行くから。ちゃんを間に挟んで話してよ。」
「う・・・」


「嫌なの?やっぱり・・・大石は」
「わっ・・分かったって。お前とさんが話しやすいようにすればいいんだろ?」


「そうそう。それで、俺たちが話し始めたら、さりげなく席を外してね。」
「・・・・いいけど。」



その返事に。瞬間で満面の笑み。



「大石っ!大好きっ!」



抱きついてきたエージを受け止めながら、出るのは溜息。


救ってくれなかった不二は笑いをかみ殺し。
完全無視だった手塚が、気の毒そうな瞳で俺を見ていた。



しってるか、エージ。
あの、おとなしい彼女からこれだけの情報を聞き出すために、俺がどんなに骨を折ったのか。
シクシクと痛む胃を抑えながら、お前のために頑張ったのに。



これって、骨折り損のなんとか・・・って言うんじゃないか?



まあ、いい。とにかく。


一日も早く、両想いになってくれ。


また痛み始めた胃を抑えながら。俺は切に願った。




















「骨折り損」  

2005.05.02




















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