SA.KU.RA.N.BO 〜相合傘〜
「あーあ、せっかく部活もないのに雨っすねぇ。エージ先輩。」
「んにゃ。けどさ、めったにない休みだし、どっかで何か食べて帰ろ、桃。」
「あ、けど。俺、傘持ってないんすよ。」
「へへん。俺、置き傘してるもんねっ。仕方ないから入れてやるっ」
「エージ先輩と相合傘ってのもなぁ」
「ナニ?なんか文句あるかにゃ?」
「いやっ、文句は・・」
部室を出て、桃と相合傘。
どこで何を食べようか・・・相談しながら歩いていたら昇降口で空を見上げている女の子がいた。
あっ!
「なんすか?急に立ち止まって。忘れ物っすか?」
「桃、ゴメン。悪いけど、部室に戻って大石と相合傘してもらって。」
「へ?」
きっと桃は目を丸くしてるだろう。
でも、そんなもの見てるヒマはない。
俺の視線を独り占めしてるのは彼女だ。
空を見上げていた彼女が、意を決したように雨の中に足を踏み出した。
ダメだ!
「じゃあね!桃、メンゴ!」
傘を片手に走り出す。
雨の中放り出された桃が俺の名前を呼んでたけれど、そんなこと構っていられない。
だって、だってさ。俺の大事なあの子が濡れちゃう!
水溜りを避けながら彼女を追いかける。
早く、早く。彼女を雨から守らなくちゃ。
「ちゃん!」
俺の声に、彼女が振り向いた。
その頭の上に素早く傘をさしかける。
あ・・・髪が濡れてる。
「英二君。どうしたの?部活は・・・休み?」
「うん。急に雨が降ったし、監督の意向で臨時休業になったんだ。」
「そう、良かったね。あ、ひょっとして・・・残念?」
目の前で少し首をかしげて見せる彼女、目眩がするほど可愛い。
「うんにゃ、ラッキー!ちゃんに会えたしっ」
「もう・・・冗談ばっかり」
照れたように下を向いたちゃん。
冗談じゃないんだけどな。
「ねっ、傘ないんだよね。俺、送るから。」
「でも、家の方向が違うでしょ?」
「ほんのちょっと回ればいいだけだしさっ。気にしない、気にしない。」
だってさ、ナイショだけど。
ちゃんに会いたくて遠回りして近所を歩いてたりするんだもんね。
でも・・って遠慮してるちゃんの肩をポンポンと叩いた。
う〜っ、すんごい心臓がバクバクしてるっ。
それでも平静を装って・・・めちゃくちゃ緊張して触れた。
一瞬、瞳を大きくしたちゃん。
次には柔らかく瞳を細くして笑ってくれた。
「ありがとう。遠回りさせて・・・ゴメンね?」
可愛いっ!なんて可愛いんだよっ!
もうっ。くらくらしながらちゃんの顔を見つめていた。
雨の降る中。
大好きな彼女と一つの傘で歩く。
雨なんか憂鬱で大嫌いだったのに。
今は大好き。
景色が違う。
彼女がいるだけで、俺の目に映るものが違ってくる。
他愛ない、おしゃべりして。
ケラケラ笑って。
ちゃんが俺を見て。
俺はちゃんを見て。
大好きな君と相合傘。
めちゃ、シアワセ。
翌日は、お日様ピカピカ。
俺は、いまだ幸せに酔ってた。
もう・・・告ってもいいかなぁ、なんて。
調子のいいこと考えたりして。
朝練の部室では。
「エージ先輩、酷いっすよ」
隣で桃がひたすらクシャミをしてた。
「相合傘」
20005.04.26
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