策士です。それが何か? 4












放課後のこういう店って、学生のためにあるってかんじ。
広々としたフロアに色もデザインも違う制服が入り乱れ、中には見慣れた氷帝の制服もある。
その度に知ってる人じゃないかとビクつきながら様子をうかがい疲れた。


やっとのことでトレーを手にして席に戻ると、ニコニコと胡散臭い笑みを浮かべた忍足がいる。
人目を避けたいと思うのに、忍足の選んだ席は歩道に面した大きなガラス窓の前だ。



「なぁ。アイスコーヒーのシロップ、余分に貰うてくれたか?」
「貰うわけないでしょ?そんなに欲しけりゃ自分で貰ってきなさいよ」


「え〜、侑士。苦くて飲めなぁい」



口元に拳をあてて可愛いコぶる男子高校生なんか見たくない。
ドンびきしてやったが、大きな瞳の忍足が少女っぽく私を見つめてくる。
仕方がないので私のジュースをコーヒーに注いでやろうとしたら忍足に手首を掴まれた。



「なにすんねんっ」
「なにって、甘くして欲しいんでしょ。私のオレンジジュースを足してあげるよ」


「恐ろしい奴やな、ジブン」



血相かえて自分のアイスコーヒーを守る姿がおかしい。
遠慮なく笑ってやったら、口をとがらせた忍足が「常識のない人間って嫌や」と呟いた。



「忍足に言われたくないもんね」



はなされた手首を気にしながら、文句を言う。
思いのほか強い力で掴むから感触が残ってる。
跡が残ってないかと手首をさすって顔をあげるとガラス窓を見ながら満足げに笑っている忍足がいた。


まさか、知り合いが?
身構える私に気付いて、忍足が「なんや?」と首を傾ける。



「外に誰かいた?」
「いや。可愛いなぁと思うて」


「は?」



見れば、窓の外を可愛い制服を着た他校のコたちが歩いていた。
ガラス越しに目の保養かよと呆れる私の姿も映っている。



「ええ具合にいけてるのが嬉しいよな」
「あっ、そう」



外を歩く女子高生がイケてるってか?悪かったね。イケてない女子高生が相手で。
まぁ、別に私も忍足相手にイケてなくてもいいけどね。


さっさとメガネ屋に行くぞと、決意も新たに勢いよくジュースを飲む。
その後も忍足はガラス窓を見つめては嬉しそうに笑っていた。


傍から見たら変質者ですよ、オシタリ君。





そして、十五分経過。



「ねぇ、早く飲んでよ」
「せやかて苦いんやもん。コーヒー苦手やし」


「ならアイスコーヒーを頼むなっ」



ちびちびとアイスコーヒーを飲み続ける忍足に苛々する。
コイツといると確実に血圧が上がるぞ。



苛立ちを紛らわせようとテーブルに置きっぱなしだった携帯を手に取った。
すると、すかさず横から忍足の甘えた声が邪魔をしてくる。



「なぁ」
「なに?」


「オレンジジュース飲ませて?」
「やだ」


「そう言わず。俺を助けると思うて」
「助けたくないし」



この男が何を思ってアイスコーヒーを注文したかは知らないが、それは自己責任ってもんでしょ。
無視して僅かに残ったオレンジジュースを飲み干そうと紙コップに手を伸ばしたら、またしても横から手が伸びてきた。



「ちょっと」なにすんのよ!!



ガツッと大きな手が紙コップを持つ私の肘を掴む。
それと同時にテーブル越しに忍足の顔が近付いてきた。
その尖がった唇の形を見て、咄嗟に左手に握ってた携帯を振りおろす。



「痛っ」



呻いた忍足だが、口はしっかり私のストローをくわえていた。
ジュルジュルと気の抜けた音がして、ゆっくりと忍足がストローから口を離す。



「ごちそうさん。あ、そういえば俺ら間接キ・・」



最後まで言わせず、私は再び忍足の頭を携帯で殴った。




















策士です。それが何か? 4

2010/07/24




















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