越前君と再会して三日。
それは恋人と呼ばれるようになっての三日間。
彼はクールな人なんだと、ずっと思っていた。
でも、この怒涛の三日間で認識が変わった。
クールなんかじゃない。
彼は胸のうちに燃えるような情熱を隠し持っていたの。
年下の彼 『独占欲』
再会した翌日。
私は越前君に昨日と同じく手を引かれて彼の実家に連れて行かれた。
「この人、俺の恋人だから。」
玄関に入って挨拶をしようとする私より先に越前君が言うから、私の頭は真っ白になってしまった。
彼と同じ瞳を持つお父様はゲラゲラと笑い、隣のお母様がお父様をたしなめる。
「コイツと付き合うのは骨が折れるぜ?
嫌になったら、いつでもオジサンに相談しな。俺がリョーマにガツンと言ってやるから。」
顔は似てても越前君とは全く違う性格らしい、くだけたお父様に緊張をほぐしてもらった。
さぁさぁと促されてお家に上がり、お茶を飲んで、少し話しをして。
なのに10分もしないうちに「もう、いいだろ。じゃあ、」と越前君に腕を引かれて立たされる。
「俺の部屋に行こう」
「え、でも・・」
「オヤジの相手してたら日が暮れるよ。」
恐縮して頭を下げる私を引きずるようにして、越前君は長い廊下をさっさと歩いていく。
「ココ」と、ぶっきら棒に言って開いたドアの向こうは越前君らしいシンプルな部屋だった。
全開にした窓からは夏の爽やかな風が入ってきて気持ちがいい。
「あ、これ。中学のときの写真。」
机の上に飾られた懐かしいテニス部の写真が目についた。
越前君がいる。桃城君、海堂君、懐かしいメンバー達・・・そして私も。
私たちが引退した日に撮った最後の集合写真だ。
「の写真、これしかなかったから。」
そっと後ろから伸びてきた手が肩から私の体を包む。
背中から優しく抱きしめられて身が震えた。
昨日の今日で越前君に触れられるのに慣れるはずがない。
身を硬くしていたら、ゆっくりと振り向かされて唇が落ちてきた。
慌てて目を閉じる。
駄目、ドキドキしすぎて息が出来ない。
どうしていいかも分からずに受け入れていたら、徐々に体を押されてトンと肩を突かれた。
え?と思ったらベッドに押し倒されていた。
「え、越前君、ちょっと待って!」
「もう丸三年待った」
「そうじゃなくて!ちょっ、駄目よ。」
「なにが?」
「なにがって、」
混乱して焦りまくる私をよそに越前君は薄っすらと笑みを浮かべて余裕綽々だ。
ご両親がいる家で、それも昨日から付き合い始めたばかりでコレは展開が早すぎる。
待って、駄目、を繰り返す私と聞く耳を持たない越前君。
だが、いきなり大きなノックの音がして私たちは固まった。
「もしもーし、お飲み物をお持ちしましたよ!
お邪魔みたいだから外に置いとくけど。青少年!ガッツクのはみっともないぞ〜。」
扉は閉まったまま。
でもドアの外から見ていたかのようなお父様の言葉に越前君の目が見開いた。
私の状況といえばベッドの上に押し倒されたうえに手首を拘束されて半泣きだ。
「ちぇっ、邪魔が入った。」
子供のような拗ねた顔をして越前君が拘束を解く。
それが恋人になった第一日目。
二日目はテニス部の集まりをすっぽかしたという事で、河村先輩のお寿司屋さんで桃城君たちと会うことになった。
当然越前君も呼ばれていて、二人は別々に店へ向かうはずだった。
なのに彼は約束もなく私の家に迎えに来て、昨日のことが嘘のように礼儀正しく私の母に挨拶をした。
「さんとお付き合いさせていただいてます、越前リョーマです。」
私から何も聞いてなかった母と突然の越前君登場に動揺する私。
そんな私たちに笑顔を浮かべ、では・・・と私の手を引いて家を出る彼。
「突然どうして?ビックリした。」
「朝、早くに目が覚めたから。」
「それだけ?」
「そう。時間があったから早く会いたいと思った。それがどうかした?」
当たり前のように言われてしまったら何も言えなくなる。
親に問い詰められるのは帰ってからの事だと諦めて越前君と歩いた。
ああ、本当に男の人になった。
越前君は越前君なのに、不思議な感じ。
私の手を包む節くれだった大きな手。
私の顎より高い位置にある肩。
中学生の越前君が突然大人になって現れた感じに戸惑ってしまう。
「なに考えてるの。」
「えっと、背が高くなったなって」
「二年ぐらい前から急激に伸びた。ミシミシ・・・って。」
「ミシミシ?」
「そっ。夜、寝てるとミシミシって」
淡々と話す越前君の背がミシミシと伸びていく姿を想像して笑ってしまった。
クスクス笑っていたら、ふんわりと頭を撫でられる。
優しい仕草に顔をあげれば、仕草以上に優しい瞳をした彼がいる。
「やっと笑った。、緊張して笑わないから。」
「越前君、」
「リョーマ」
「リョーマ君」
「の笑った顔、好きなんだ。もっと笑っててよ。」
そんなに優しいと泣きたくなっちゃうよ。
俯いたら肩を抱き寄せられて髪にキスされた。
とても満ち足りてシアワセだった・・・、はず。
なのに!
「は俺のっスから。手、出さないで下さいよ。」
河村先輩のお寿司屋さんに着いて、リョーマ君の開口一番がコレだった。
仰け反るような桃城君と目をむいている海堂君。
「ま、待てよ、越前!そりゃねぇだろうよ!」
「桃先輩、が好きだったんですか?」
「ちっ、違うけど、けど、けどよって、イキナリ呼び捨てかよ!」
店内で私を巡って言い合いをする二人に身の置き所がない。
隣から海堂君に「本当か?」と聞かれるし、
河村先輩には「大石たちに教えなきゃ」などと楽しそうに言われて困ってしまう。
「、考え直すなら今だぞ?別れたくなったら俺に相談しろ!」
帰りにはアルコールが入っているわけでもないのに酔ってるみたいな桃城君に言ってきかされた。
リョーマ君は楽しそうに笑うと「そんなこと一生ないっスよ」と私の肩を素早く抱く。
「あーあ、は苦労するぞ。」
桃城君の呆れたような声に見送られて終わった、恋人としての二日目。
三日目は朝からメールが次々と舞い込んで来た。
リョーマ君との事が、あっという間に広がったらしい。
テニス部の繋がりに今更ながら感心した。
夕方に現れたリョーマ君はテニスバッグを背負っていた。
暮れなずむ公園で肩を寄せ合い、会えなかった間に起こったことを色々と話す。
まだ彼がいることに慣れない私は沈黙が怖くて話題が途切れないよう焦ってしまうけど、リョーマ君は落ち着いている。
なんだか焦っている自分が恥ずかしくなって黙ってしまうと「どうしたの?」と綺麗な瞳が私を覗き込んできた。
「なんか私ばかり喋っちゃって恥ずかしい。」
「そう?俺は楽しいけど。もっと聞かせてよ。俺の知らないの時間を知りたい。」
「私だって越前君のこと聞きたいよ?」
「リョーマ。越前君は禁止。」
「リ・・リョーマ君」
「そう」
リョーマ君は膝の上に肘を突いて嬉しそうに首をかしげて笑う。
私が言うのもなんだけどリョーマ君のそんな幸せそうな顔、はじめて見るの。
そんなに私のことが好き?
なんて思ってしまったら勝手に顔が赤面してしまった。
誤魔化すように、また話題を探して口にする。
「あ、あのね。乾先輩からメールがきてね。色々と聞かれて・・」
「なんで乾先輩がのメルアド知ってるの?」
「大学が一緒だし・・・食堂で会った時に聞かれて」
「聞かれたら誰にでも教えるの?」
「そうじゃないけど、」
「じゃ、もう禁止。男にメルアドと電話番号を教えるの、ヤメ。」
「越前君、待って」
「リョーマ」
「リ、リョーマ君、あのね」
「は二回に一度は『待って』だね。その『待って』も禁止。」
あ、でも、待って・・・・
言ったはずの言葉は熱い唇に飲み込まれて音にならなかった。
たくさんキスされてヨシヨシとあやされてしまったら抵抗する気力も失ってしまう。
ぐったりと彼の腕に身を委ねていたら耳元に囁きが落とされた。
「はね、俺だけのだから。」
撃沈。
リョーマ君の独占欲にノックアウトされた三日目だった。
年下の彼 『独占欲』
2006.07.31
沙羅も撃沈・・・/////
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