冷静になると、詩音が凶行に走った理由がわからなくなったのだが、悟史の復讐の為だよな?
しかし、その「悟史の復讐」という凶行理由も沙都子を追い詰める過程で瓦解した。
詩音は悟史が死亡したのだと諦めた。
だから、敵討ちを銘打って復讐に走った。
沙都子は悟史が生きていると信じていた。
だから、今も強くなろうと頑張っていた。
にーにーに甘えない。
しっかりした1人前になったことを教える。
似たような事を沙都子は「祟殺し」編でも言った。
あの時は圭一と同じく、
「そんな事を言わずに、周りに助けを求めてほしい」
と思った。
だが「目明し」編ではそうは思えない。
沙都子には沙都子なりの罪悪感がある。
にーにーに甘えない。
しっかりした1人前になったことを教える。
この決意を覆す。
それはにーにーを追い詰めた元の自分に戻ることに等しい。
複雑な心境だ。
「目明し」編の、地下祭具殿に捕らえられてしまった状況下では、この決意がすばらしい事に思える。
でも「祟殺し」編の時ならば、その決意を覆してでも仮のにーにーに甘えてほしかった。
それが互いに幸せになれる方法だったと思う。
1回目は「助けてにーにー」という言葉への悲痛さと嫌悪感。
2回目は「にーにーに甘えない」という言葉への寂しさと感心。
同じ内容でも、その場面によって受ける感情が違う言葉を発したのは、またもや沙都子だった。
結局、沙都子は1度も「にーにー」に助けを求めることなく死んだ。
「綿流し」編で梨花と沙都子は、ただ無残に殺されたのだと思っていた。
しかし事実がここまで異なるとは思いもしなかった。