1.ゲームスタートは無理やりに


 歩いている時間すらもったいない。

 そう考えた僕はとうさんの後に続き、都会の中心にあるビル街を歩く間も本を読んでいた。

歩き読み力

 大体とうさんに無理やり引っ張られてココにきたけど、その理由もよく知らない。

 僕はこんな所をチョロチョロと歩くよりも勉強がしたい。

「…とうさん、一体どこへ行くんですか?」

 とうさんに聞いてはみたけれど、微笑みを崩さず、
「着けばわかる」
と、簡単な答えが返ってきただけだった。



 僕達は更にビル街の奥へと進み、重々しい建物の中を通過し、黒光りしている大きな鉄のドアの前までやってきた。

 そのドアの前には中年の男性が立っていた。

 その人は一歩前に進み出て、
「ようこそ、王我様。力様」
と言った後、深々とお辞儀をした。

 王我(おうが)というのはとうさんの名前、そして力(りき)というのは僕の名前だ。

 僕の名前は郡藤 力(ぐんとう りき)、14歳の中学生。
 そして僕の横にいるのは郡藤 王我(ぐんとう おうが)。
 僕の、父だ。

「準備はできているかね?」

 とうさんが中年男性に尋ねると、
「万全です」
という答えが返ってきた。

 一体何の事を言っているのか、僕にはさっぱりだ。

「それでは、頼む」
「はい」

 中年男性は鉄の扉近くにあった機械にカードを通し、何らかの数字を入力した。
 すると、ピーという音と同時に鉄の扉がゆっくりと開いた。

「どうぞ、中へ」

 中年男性の誘導によって僕ととうさんは鉄の扉の中に入っていった。

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