ここが“GAME―パラレル―”の世界なのだろうか?
見渡す限り、一面の闇だ。
しかも、自分の姿すら確認できない。
その時、嫌な考えが僕の頭をよぎった。
転送に失敗して、僕は変な場所に飛ばされたのではないだろうか。
もしかして、僕はもう二度とあの世界に帰れない?
「うわー帰せ!僕を元の世界に帰せー!」
半狂乱となった僕はジタバタともがいたが、もがいても何かに触れる感触がない。
それが更に僕の恐怖をあおった。
「プッ、ギャーハッハッハッ!」
「な、何?」
突然大きな笑い声が聞こえ、僕はもがくのをやめた。
「『うわー帰せ!僕を元の世界に帰せー!(ジタバタ)』だってよ。ワハハハ!」

暗闇の中で誰かが笑っている声が聞こえる。
しかも僕の先程の行動を見ていたらしい。
「誰だ、笑ってるのは。ジッと見てるなんて悪趣味じゃないか!」
そう責められて誰かさんは大きな声で笑うのをやめた。
しかし、まだクックックとこらえ笑いをしているのが聞こえる。
「いや、悪い悪い。
どんな行動とるかなと思って見ていたら、いきなりジタバタしだすもんだからさ」
謝りながら何かが僕に近づいてくるのを感じた。
姿は見えない。
「ようこそ“GAME―パラレル―”の世界へ」
そのセリフで僕は先程より冷静になった。
「ここが“GAME―パラレル―”の世界?見渡す限り一面の闇ですけど?」
僕は辺りを見回してみたが、やはり見渡す限り一面の闇だ。
「まあ、正確にはまだ“GAME―パラレル―”の世界には入っていないからな。
ここはプレイヤーの登録場所だよ」
「プレイヤーの登録場所?」
「そう、ゲームを開始する前に遊ぶ人の情報を把握しておく必要があるんだよ。
その情報によってゲームを開始した時の状態が変わるのさ」
「へえ、そうなんですか」
それにしてもやたら口調が馴れ馴れしい人だな。
「あ、自己紹介が遅れたな。
俺・・・いやワタクシはこの“GAME―パラレル―”の世界を統括しております。
いわばこの世界の神様代わりをするロボットってところですかね」
馴れ馴れしい口調の人ではなく馴れ馴れしい口調のロボットだった。
「では、さっそくあなた様の情報を教えていただきましょうか」
張り切っているこの人・・・じゃなくてこのロボットに悪いけど、僕は今すぐ帰りたい。
僕はあの、と声をかけた。
「僕、今すぐに帰りたいんですけど」
「はぁん?」
ドスのきいた声がかえってきた。
怖い。
「じゃ、何しに来たんだ?あんたは」
「父に遊んでこいって無理やりほうりこまれたんです」
「・・・」
「だから、あのはやく元の世界に・・・」
「無理だな」
「え?」
「だから無理だって。一回情報登録しないとあっちの世界には戻れない。
あんた気づいてないのかもしれないが今のあんたには実体がない。
実体がないままではあっちの世界には転送できないんだよ」
ああ、だからもがいても何かに触れている感触がなかったのか。
「それでは、仕方ないですね」
「ああ、観念しな」
『観念しな』って、僕は追いつめられた犯罪者か。
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