それから、僕は色々な情報を彼(でいいのだろうか?)に教えた。

 名前、性別、年齢、その他イロイロ。

「それにしてもチカラっていう字でリキって名前。見事に名前負けしてるよな」
「・・・名前の事は放っておいてください」

 そんなたわいもない話をしているうちに僕の周りにキラキラと光が降ってきた。

「お、登録完了したな。決定したぞ。あんたのゲーム開始時の職業は『魔法使い』だ」

「魔法使い?」

 聞いた事はある。
 怪しげな呪文や薬で科学の力ではできない事をする人だ。

「ほら、見てみろよ」

 暗闇の中からスーッと鏡が出てきた。

 その鏡の中には先程までは見えなかった僕の体があった。

「あ、あれ?」

 僕の髪は黒髪で、瞳は濃い茶色。
 赤いチェックのシャツにズボンという服装だった。

 確かに顔形は同じだ。

 だけど、その鏡の中の僕はおかしかった。

 髪の色はまっ青。
 瞳の色は薄い赤。
 頭には赤のハチマキを巻き、白いダランとした服を着て、その上に髪の色と似た色の青いマントを羽織っている。

自分ではない自分

「何ですか、この格好は」
「あっちの世界と同じ格好じゃつまらないだろ。魔法使いっぽい格好にしてみた。
 ま、イメチェンだな、イメチェン」

 変わりすぎだよ。

「あ、あとこれだな」

 今度は暗闇から分厚い本と杖がスーッと出てきた。

「これは魔法の本と杖」
「どうやって使うんですか?」

「う〜む。どうやらあんたゲーム初心者らしいから、ナビつけてやるよ。
 そいつに訊いてくれ」
「はあ・・・」
「ここから出る方法もそいつに訊いたらわかるから」
「はあ・・・そうですか」

「これで情報登録は完了。俺の役目も終わりって事だな」
という声と同時に暗闇が溶け、サーッと辺りが明るくなった。

「!」

 気がつくと僕は小高い丘に立っていた。
 辺りを見回すと山や海も見える。
 僕が実際に住んでいる世界と見間違えるような現実味がその世界にはあった。

「すごい」

 素直に感心していると、遠くから響くような声が聞こえた。

「少しぐらいこの世界を見てから帰ってみたらどうだ?面白いかもしれないぞ。じゃーなー」

 それっきりその声は聞こえなくなった。



 こうして僕の長い長いゲームは無理やりにスタートした。

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