急いで自分の部屋に戻り、入り口のドアを閉めた。
そしてすかさず、ドアに耳を当てた。
どうやらユミさんが僕の後を追ってくる様子はないようだ。
フゥと息を吐きながら、ふとドアの横を見た。
そこには玄関の物より小さい鏡が掛けられていた。
『男の子でも身だしなみを整えるのは大切よ』
と言って、母さんが半強制的に設置した鏡だ。
鏡の中に黒髪で濃い茶の瞳の僕がいる。
その鏡の中の僕からは全く覇気が感じられない。
濃い茶の瞳が澱んでいた。
鏡の前でもう一度ハチマキをまいてみた。
すると、先程と同じように髪の色がまっ青、瞳の色が薄い赤に変化した。
「この状態が準備完了ってことか」
僕は小さな声で独り言を呟いた。
この外見になることで、僕は高性能の兵器へと変化したことになる。
先程の検証で、魔法の威力は“GAME―パラレル―”の世界での威力と違いはないことがわかった。
ということは、1度使った、あの最強呪文を使えば“GAME―パラレル―”の世界と同じように山も吹っ飛ぶだろう。
「・・・これで良かったんだ」
そう呟きながら、鏡の中の僕を覗く。
先程と同じように赤い色の瞳は暗く澱み、光を宿していなかった。