12.盗賊


 砂原神楽(さはら かぐら)14歳
 “GAME―パラレル―”内職業「盗賊」


 最低だ。
 本当にあの親父、最低だ。
 自分の息子を何のためらいもなく殺そうとするなんて、最低にもほどがある!

 わたしは1人で憤慨しながら、あいつをグイグイ引っ張った。

 あいつとは当然、郡藤力の事だ。
 今は自分の父親に殺されかけたショックのためか呆然としたまま、わたしに引っ張られている。

 力からすると、この危険な状況で自分を先導してくれるわたしに頼もしさを感じているかもしれない。
 だけど内心では、わたしだって焦ってる。

 早くこの建物を出なければ、わたしも力もマズイ事になりそうだ。

 わたしはゲームクリアでゲットした能力をフル活用して、人がいない出口を探した。
 人が1、2人いたとしても、今の運動神経と能力があれば多少は無理が利く。

 相手に一撃くらわせて、その時に武器を盗んでしまえば手出しはできなくなるからだ。

 それよりも、わたしが今一番心配なのは後ろのお坊ちゃんだ。
 呪文を唱える余裕がない今の状況では、力はただの人間なのだ。

 やっぱり、わたしが守るしかないんだろうね。

 うーん、どうしてわたしが守ってやらなきゃいけないのだ。
 普通、逆じゃないの?

 なんて事を考えていると、わたしの能力が前方にいる人の気配に気づいた。
 兵士が一人、曲がり角に隠れている。

 力を兵士から見えない位置に隠れさせると、わたしはそのまま直進した。

 近付くわたしの気配を感じ、兵士が通路に躍り出た。

 だけど、その時すでにわたしは兵士の真後ろに陣取っていた。

 この瞬発力こそが、わたしのゲットした能力のひとつ。

 わたしを見失い、オロオロしている兵士の背中に強烈な蹴りを浴びせた。

 兵士が前につんのめり、転ぶ。

「貴様っ!」
と、兵士は怒りながら銃に手をかけようとした。

 だけど、あるわけがない。

 奴の武器はわたしが手にしている。
 わたしは銃を珍しそうに見た後、ニヤリと笑いながら銃口を兵士の方に向けてみた。

怖いって

「・・・!」

 声にならない声をあげながら、兵士は逃げていった。

 その光景を半ば呆れながらわたしは見ていた。

 全く、わたしが銃を扱えるわけないでしょうが。
 それにさすがのわたしだって、できるだけ人殺しになる事は避けたいって。

 外では銃声が聞こえる殺し合いの現場で、こんなことを考えているのは相当場違いだとは思うんだけどね。

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