13.商人


 若宮鷹貴(わかみや たかき)16歳
 “GAME―パラレル―”内職業「商人」


「神楽ちゃんって、絶対力が好きだよな」
「そうかもしれないわね」

 神楽ちゃんが飛び込んでいった建物をぼんやりと見つめるオレ達。

 事前に言っておくが、神楽ちゃんについて行かなかったのは足手まといになるからであって、オレ達2人が及び腰になったわけではない。

 それにしても暇だ。
 神楽ちゃん達が帰ってくるまでやる事がない。
 いや、帰ってきた所でオレ達がやるべき事なんてないけどさ。

 あまりにも暇なので、由宇香ちゃんと先程のたわいない話をしてみた。
 ココは戦場のはずなのに、人の色恋話なんてやっていると非常に気が抜ける。

 こうして口に出す前からそうだとは思っていたが、神楽ちゃんは確実に力に好意を持っている。

 彼女は何かしら理由をつけて否定すると思うが、アレは絶対にそうだ。

 そうでなければ、力のために学校を抜け出したり、立ち入り禁止区域に侵入するもんか。
 しまいにゃ、あんな危険な建物に入って救出に行ってしまった。

 これは奉仕精神のなせる業ではない。
 それをやってるのが神楽ちゃんなら、なおさらだ。

 1週間程度の付き合いだが、そんな奉仕精神が彼女の中にはないだろうという予想はつく。

 多分あの建物にいるのがオレだったら、神楽ちゃんはきっとオレを見捨てるぞ。
 魔王の城のトラップにオレがはまった時みたいに見捨てるぞ。

 あ、自分で考えてて泣きたくなってきた。

ホロリ

 フン、いいさ。
 オレだって神楽ちゃんはタイプじゃないもんな。

 どちらかといえば今、横にいる由宇香ちゃんの方がタイプだ。
 まあ、浪費癖が激しそうだからお付き合いしてぇという気持ちにはならないがね。

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