「それで、鷹貴。あなたはどうしてココに来たの?」
由宇家ちゃんが突然理解不能な質問をしてきた。
「え?どうしてって、理由は知ってるでしょ。
神楽ちゃんがどうしても力に会いに行くって言う事聞かなかったからだよ」
「本当にそれだけなの?」
「本当にそれだけだよ」
その回答を聞くと、由宇香ちゃんはつまらなそうにため息をついた。
「また、お金儲けでもするための秘策でもあるのかと思ってたのに」

何なんだ、オレのこの言われようは。
何故オレはここまで信用がないんだ。
神楽ちゃんが心配でここまでついて来たのは真実なのに、何故その行動にウラがあると思われているんだ。
金か?
オレがお金第一の守銭奴だからか?
でも金が大好きだというだけで、どうしてここまで言われなきゃならないのだ。
切ない。
本当に涙がこぼれそうだよ。
・・・でもまあ、オレが守銭奴なのは事実か。
それどころか“GAME―パラレル―”に関する事実を聞いて、オレは両親も真の守銭奴である事を認識したよ。
自分達の子供を最も安全なシェルター(だと思っていた)“GAME―パラレル―”に送り込んだ両親。
あの人達が自分の命よりも子供の命を優先した事に大変驚いたオレは、
「どうして自分よりもオレの命を優先したんだ。
死んでしまえば、もう金は稼げないんだぞ」
と、親父に訊いてみた。
返事はこうだ。
「自分が助かるよりも、お前が助かった方が将来的に利益が大きいと考えたんだ」
・・・。
これはオレが喜ぶべき発言なのか、悲しむべき発言なのか。
それともこの発言は単なる親父の照れ隠しなのか。
オレにはわからない。
誰か教えてくれ。
こんな感じの、心にスキマ風が吹きそうな会話をしていても、オレは全く動じない。
理由は簡単。
慣れているからだ。
そう考えると、これがオレの家特有の団欒なのかもしれない。
本来ならば子供を優先して助けた理由が、利益がどうのこうのだというのは不謹慎だ。
そう思っていても、普通口には出さない。
しかし本当の事を言えば、この言葉を聞いた時のオレは両親が自分の事を高評価してくれたのだと内心喜んでいた。
結局こういう家なんだよ、オレの家は。
両親の不在を寂しがる普通の子供だったオレも、十数年あの家で生活して毒されちゃったようだ。
前へ 次へ
戻る