14.自由人
桧枝由宇香(ひえ ゆうか)15歳
“GAME―パラレル―”内職業「自由人」
私は駄目な人間です。
何をやりたいのか、何が得意なのか、自分でもわかりません。
それは、私が今までずっと思っていた事。
そして“GAME―パラレル―”に行く事で、よりリアルに私の前に突きつけられた事。
私がこのゲーム世界で任命された職業は「自由人」。
何の特徴のない、何もできない人。
戦う彼らに私ができた事は、傷ついた時に薬を与える。
たったそれだけ。
そんな私が人の心荒む戦場で何の手伝いができるというの?

他の3人が彼らなりの決心をして、戦闘に臨むことを決めた。
だけど、この現実の世界で私は傷ついた人に分け与える薬なんて持っていない。
だから、私は何の役にも立たないのよ。
昔から私はこう。
何ひとつ満足にできない私。
綺麗な物、美しい物で自分を着飾る。
自己嫌悪に陥らない方法を、私はそれだけしか知らない。
必要なお金はいつでも父が出してくれた。
父は私が子供の時に子育てに参加できなかった事をとても後悔していた。
だから、せめて今この時に娘が望む事をしてあげよう、そう思ったのでしょうね。
望む事を叶え、望む物を与える事は良い子育てではないと、私でもそう思うのに。
だけど、本当は可愛らしい服を着ても、綺麗な宝石がたくさんあっても、私の心で常にあの言葉が繰り返される。
私ハ何モデキナイ無能ナ人間。
そんな私が政府軍への協力依頼に出した答えは、もちろんNO。
「そう、仕方がないね。こればっかりは無理強いできないから」
力君がそう言って寂しそうに笑うのを、私は見た。
他の人も似たような顔。
…仕方がないじゃない。
私はゲームの能力を持っていても、あなた達のように役には立たないのだから。
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