彼らは兵士に連れられて戦場に向かい、私はその場にポツンと残された。
政府軍の人が安全な場所まで送ると言ってくれたけれど、私は断った。
私のために誰かに負担がかかるのは、とても嫌だったから。
それに神楽ちゃんのお墨付きの道を覚えている限り、帰りに危険が及ぶ可能性は限りなく低いと思ったから。
そう、帰る事はいつでもできる。
だから、私は神楽ちゃんに気づかれないくらいの間隔を空け、後をつけてみた。
協力しないと言ったものの、このまま戻れば神楽ちゃんや鷹貴の両親に問いただされるのは明らか。
責められるのも明らか。
それはとても面倒。
だから、私は戻りたくなかった。
そう、私は戦場に向かう事も、安全な場所に戻る事も嫌だった。
でも、だからといって力君達の後をつけている現在の自分の行動にも自分自身疑問を持っていた。
何もできない自分に絶望していた私。
もしかすると、私はこの場所で死にたいのかもしれない。
「“元に戻る事はない時間よ。時の精霊よ。今ひとときこぼれ落ちる砂をとどめたまえ。ストップ”!」
力君がよどみなくスラスラと言葉を発し終えると、王我軍の兵士は固まったまま動かなくなった。
おそらく神楽ちゃんが建物に突入した時も、力君はこの魔法を使ったのでしょうね。
ただ今回は政府軍の兵士は普通に動いていた。
そして、彼らは固まっている王我軍の兵士を拘束していた。
なるほど、こうすれば力君が人殺しをする必要がなくなるという訳ね。
私の見ている目の前で次々と王我軍の兵士が捕らえられていく。
だけど、この作業を何回も繰り返すと王我軍の兵士は力君を集中的に狙うようになった。
それをサポートするのが神楽ちゃんと鷹貴。
魔法の効果がきれる前に拘束が間に合わなかった兵士、力君が魔法をかけるのに失敗した兵士が銃口を力君に向ける。
だけど、そんな兵士は1回の魔法につき2〜3人がせいぜい。
発砲前に神楽ちゃんの強力なキックか鷹貴の投げる凶器の紙幣にやられた。