つまり、私はブン君が言っていた“自由人”の能力が使えるようになったという事なのかな?
力君よりも威力は劣るけれど、口にする言葉数が少なくても魔法が使える。
神楽ちゃんよりもスピードは遅く、周囲の異変に気がつく範囲も小さい。
だけど、相手に瞬時に近づいて武器を強奪するのには十分。
そして何より、その両方の力を臨機応変に使い分ける事ができる。
『“自由人”はね、確かに役立たずの職かもしれない。
だけど、一番大化けする可能性のある職業なんだよ』
「そうかもしれないわね」
ここにはいないブン君に、今更ながら私は相槌をうった。
『自分は何もできないんだという思い込みを捨てる事。
自分の事を自分で見限っている限り、この能力は発現しないよ』
「見限っているつもりだったんだけど」
だけど、あの瞬間、私は役立たずと自分を罵りながらも王我軍の兵士をどうにかしようとして飛び出した。
本当に自分を見限っているのならば、どうにもならないと目をつぶって諦める。
でも、私はどうにかしようとして飛び出した。
…そうね、見限っているつもりでも、心のどこかでまだ自分に期待を持ってしまう。
人間なんてきっとそんなものかもしれないわね。
拘束した王我軍の兵士を手土産に、私は力君達の元に向かう。
「ごめんなさい。やっぱり私も参加していいかな?」
自分の事を役立たずだと決め付けるのは、後にしよう。
私はまだ“自由になんでもなれる人”なんだから。