2日が経過した。

 数日前からでは想像できない程、著しく戦況は変化していた。

 王我軍は次々に兵士を失い、撤退を余儀なくされた。
 政府軍は今が好機だと一気に進軍し、制圧場所を広げていった。

 でも、良い事ばかりではない。

 捕らえた王我軍の兵士を拘束するための道具が不足してきたのだ。

 そこで僕達は強制的に拘束する方法から、相手が自分から白旗を掲げるように差し向ける方法に変更した。



 今、王我は僕を殺そうとした時にいた、あの建物に潜んでいる。
 そこ以外に逃げ場が無いように、政府軍が包囲して追い詰めたのだ。

 現在、分散させていた各拠点からココに王我軍の兵士が集結しつつある。

 つまり、待っていれば相手は自ら現れるのだ。

 まず、各位置に点在している政府軍の誰かが、進攻してくる王我軍を発見する。

 次に距離を見計らい、僕が王我軍の周囲に初級の攻撃魔法を放つ。
 魔法が建物の壁表面を剥ぎ、兵士達の頭上に粉上の瓦礫がパラパラと降り注ぐ。
 突然聞こえた建物の削れる音と、突然降ってきた瓦礫の雨に兵士の足が止まる。

 その瞬間、僕は彼らの足元に中級の攻撃魔法を放つ。

 “GAME―パラレル―”の世界では、最強魔法が山を吹き飛ばした。

 今放ったのは、中級の魔法だからそこまでの威力はない。
 だけど、地面に2メートル程の深さをもつ穴をあける事はできる。

 その威力を目の当たりにして、固まる兵士。

 そこに政府軍が姿を現す。
 そして、最後の警告を発する。

「お前達が知っているであろう“奴”の全力はこれ以上だ。
 死にたくないのならば、降伏しろ」
と。

 王我が“GAME―パラレル―の攻略者は強力な武器になる”と身内に公言していた事が仇になった。

 「勝てない」と大半の小隊は戦意を喪失した。
 小隊が喪失しなかった場合は、そのまま政府軍との戦闘に入った。

 その中から抜け出てきて、僕達を狙う兵士もいた。
 だけど、神楽の警戒範囲内に入れば、3人のうちの誰かが即座に潰しに向かった。

 特に由宇香さんが威力はおちるとはいえ、魔法が使えるようになった事がとても有利に傾いた。

戦う人


 1日経過すると、王我軍のほとんどの兵が白旗をあげて降参していた。
 そして今、王我のいる建物も制圧しようと政府軍が突入していった。

 少しチクンと僕の心が痛んだ。
 まだ王我への愛着が残っていた。

「…まさかこれ程までに早く敵を制圧できるとは」

 あの時、僕に協力を求めた兵士がウ〜ンと唸った後、チラッと僕を見た。
 畏怖の念が見てとれる。

「安心してください。
 このハチマキさえ燃やしてしまえば、僕はこの能力を2度と使えません」

 ハチマキを握り締めつつ、僕はニッコリと笑っておいた。

 出る杭は打たれる。

 こんな人外な力があって有利なのは、こんな戦いの場だけだ。
 この能力が危険すぎると思われてしまうのは、後々逆に僕達が危うくなる。

 取りあえず、この能力は無効化できる事をアピールしておこう。

 だけど、この事態が終われば、僕は本当にこんな能力を使う気はない。

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