僕達と一緒に来た兵士が扉横の機会にカードを通した後、握りしめたメモを眺めつつ、何らかの数字を入力した。
 すると、以前僕が王我と共に来た時と同じく、ピーという音と共に扉がゆっくりと開いた。

「ついてきなさい」
と言って、兵士が中に入る。

 その後に僕達も続いた。



 ある程度進むと、僕達は以前と同じように開けた場所に着いた。

 だけど、室内の状況が一変していた。

 これは書類だろうか。
 床を埋めつく程、大量の紙切れが散乱していた。
 周囲を見ると、室内にあるプリンタから延々と何かを印刷している。

 僕は何気なく足元に落ちていた書類を拾いあげた。

“GAME―パラレル―総合責任者 結城 遥”

総合責任者


「え?」

 書類の冒頭に記述された責任者の名前に、僕は大きく目を見開いた。

 “GAME―パラレル―”の総合責任者。
 この人、僕の実の父と同じ名前だ。

 “もしかして”という感情と、“ありえない”という感情が僕の中をグルグルと回る。

 僕の父さん、結城遥が“GAME―パラレル―”の総合責任者?

 でも、僕はそんな話を母さんから一度も聞いた事がない。
 …あ、だけど父さんの仕事内容は機密で、母さんにも一切話してくれなかったというのを聞いた事がある。

 僕は混乱した。

 この総合責任者が僕の父さんなのか、それとも違うのか。
 それをハッキリさせたくて、僕は床に散乱している書類に片っ端から目を通した。

 神楽達が不思議そうに僕を見つめている。
 だけど、それに構っている余裕は今の僕には無い。

 僕は紙切れの山の中から2種類の書類を見つけ出した。

“GAME―パラレル―総合責任者失踪により変更される業務について”
“GAME―パラレル―軍務省委譲時の作業内容”

 総合責任者が失踪したため、今後をどうするか話し合うために作られたと思われる書類。
 この書類の中に、総合責任者が行方不明になったとされる日が記述されていた。

 この日が母さんから聞いていた、父さんが失踪した時期と一致していた。

 これで“GAME―パラレル―”の総合責任者が、僕の父さんである可能性が高くなった。

 僕が生まれる前に失踪した父さんはココで“GAME―パラレル―”の開発をしていたのか?
 そういう事なのか?

 父さんがこのゲームの総合責任者で、僕がこのゲームのプレイヤー。
 しかも、現在王我の所属する軍務省に“GAME―パラレル―”は委譲されている。

 これは一体何の縁なのだろうか?
 それとも仕組まれた事なのだろうか?



「よう、よく来てくれたな」

 僕の疑問は突然聞こえた声にかき消された。

 僕達は辺りを見回した。
 だけど、何処に声の主がいるのかがわからなかった。

「いつもだったら、ココでお前らを笑って馬鹿にするんだがなー。
 悪いが今はそんな時間はない。
 俺はお前らの右隣にいるよ」

 僕達の右隣には、壊してしまうと弁償が大変そうな機械の山があった。

 そこにある小さな丸がチカチカと赤く点滅している。
 そして、そのすぐ下にスピーカーがあった。

「俺が誰だかわかるか?」

 そのスピーカーから声が聞こえた。

 この口調、声、そしてこの場所から連想されるのは一人だけだ。

「もしかして“GAME―パラレル―”の統括者?」

 僕よりも先に神楽が答えた。

「そうだ。
 実に申し訳ないがレベル99のお前らに頼みがある」

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