「レベル99のオレ達に?」

 鷹貴が不可解だという顔をして答えた。
 僕の顔も似たようなものだろう。

「今“GAME―パラレル―”に、プレイヤーが1人入っている。
 そいつは緊急用プログラムを悪用し、
 お前達以上の能力を得た後に現実世界に戻ろうとしている」

 緊急用プログラム。
 そのプログラムのおかげで僕達はレベルを最高値に上げ、すぐに現実世界に戻る事ができた。
 確か、ゲームの世界内部からゲームの設定を変更できる機能だったと思う。

 そのプログラムを利用して、“GAME―パラレル―”の能力を得ようとしている人物。

「…もしかしてそのプレイヤーって」
「察しの通り。郡藤王我だよ」

 統括者の答えに、僕はわずかに肩がビクッと震えた。
 王我はまだ勝利を諦めていなかったのだ。

「こっちの機械を操作して、王我を現実世界に戻す事はできないの?」

 由宇香さんの言葉にアッと思い、僕達は兵士がいる方に顔を向けた。
 だけど、彼らは力なく首を左右に振った。

「緊急用プログラム起動時は外部からの変更はできないようになっている」

 既に試した後だったのだ。

「奴がまだ操作途中の今なら間に合う。
 奴は緊急用プログラムの知識に乏しいままで、無理にゲームの設定を変更しようとしているからな。
 そっちの方にも何かしら異変が起きているだろう?」

 そうか、足元の紙切れの山は設定を無理に変更しようとしたために発生した異変だったのか。

「このまま放っておくと、これ以上の異変が起きるぞ。
 それは現実世界にも好ましくはないだろう?」

 この疑問に、僕は即答した。

「当然だよ。
 あの人に僕達と同じ能力を得させるわけにはいかない」

 後ろを向くと、他の3人も賛同するように強く頷いた。
 強い決意と、怒りを込めて。

強い決意と


「本来ならばそこにいる兵士達に頼むべきだろうな。
 だが、今の状況ではレベルの高いお前達にあいつの企みを阻止してもらうしか方法がない。
 本当にすまない」

 統括者は“GAME―パラレル―”内の人だから下げる頭はないけれど、頭を深々と下げている様子が想像できた。





 この場を政府軍の兵士に任せ、僕達は“GAME―パラレル―”の世界に再び向かう事となった。

「頼むぞ、必ず王我を捕まえてきてくれ」
「わかりました」

 しばし兵士と見つめあった後、僕達は例の円筒状の物体の中に入った。

 周囲の光景が揺らめき始める。

 その中で、由宇香さんが疑問を口にした。
「ねえ、レベル99の私達でないと駄目っていうのはどうしてなのかしら?」

「さあ、確実に王我をボコボコにできる奴が欲しいって事じゃないのか?」
「緊急プログラムで既にレベル99になってしまっているから、対等に戦える相手が必要なのかもしれないよ」

 この鷹貴と僕の答えには、神楽は関心が無いようだった。

 それよりもさ、と神楽が別の疑問を投げ掛けた。

「前から不思議に思っていたんだけど、王我ってどうして自分でゲームをクリアしなかったんだろう?
 力が従順だったとはいっても、こんな風に裏切る可能性があった訳だよね。
 最初から自分がクリア特典を手にしていたら、手っ取り早くクーデターで勝てたのに」

 それは僕も思った。
 だけど、適当な理由が見つからなかったので投げていた疑問だった。

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