煙が徐々に薄くなると、今いる場所が先程のスタート地点でないことがわかった。
だけど、ここも見覚えのある場所。
魔王城だ。
「王我はこの中にいます」
長老がそう言った。
以前はこの場所で死ぬほど敵に遭遇した。
その事を思い出し、僕達4人はグッと身構えた。
だけど、いざ入ってみると、魔王城内部は耳が痛くなるほどの静寂に支配されていた。
敵なんて出現する気配もない。
僕達を先導するように前を歩く長老とブンに、神楽が駆け寄り質問をした。
「ねえ、これも誤作動なわけ?」
「そのようですね」
顔だけを神楽の方に向けて長老が答えた。
「でも、これは逆に都合が良いです。
すぐに目的の場所に行けますよ」
3度不可避の敵に遭遇はしたものの1〜3階を難なく通過して、僕達は以前来た4階へとたどり着いた。
僕達は目を合わせ、ウンと頷きあった。
全員の同意を確認し、僕は魔王の部屋へと続くドアを開けた。
部屋の中は以前と異なっていた。
蝋燭が導くあの長い道も、立派な王座もない。
その代わりに周囲を占めるのは黒と緑の世界。
地面もなく、空も存在しない。
暗黒を照らすかのように緑の光がチカチカと点滅していた。
その中で堂々と座し、何かを必死に操作している人物がいた。
それは…以前にも見た事のある敵。
魔王だ。
魔王は僕達の存在に気づくと、忌々しそうに僕達を見つめた。
特に僕に悪意を向けているように感じるのは気のせいだろうか?
「フン、クソガキどもか。一体何の用だ?
まさか、お前達でワタシを止めにきたのか?」
そういうと魔王は口だけでハッと笑った。
前に見た時よりも、明らかに態度と口が悪い。
これは一体?
あっけにとられる僕を長老がこづく。
「あれが王我です」
「!」
驚きすぎて声が出なかった。
王我が魔王になっている。
何故なんだ?
何故、王我が魔王に?
その理由は僕にはわからない。
でも、僕は以前この魔王と対面した時、誰かに似ていると思っていた。
今なら誰に似ているのかハッキリとわかる。
この顔形、まさしく王我だ。
若い頃の王我はこんな容貌をしていたに違いない。