「か、返せ!」

 長老に飛び掛ろうとする王我。
 その前に僕達が立ちふさがった。

 その隙に長老はこの部屋の外に逃げだす事ができた。

「待った。
 長老の後を追いたいんだったら先にオレ達を倒せよ。
 ま、無理だろうけどな」

 鷹貴がニヤニヤと人を小馬鹿にした笑みを浮かべ、王我を見つめた。

 僕達の態度に王我の顔が徐々に、だけど確実に険しくなる。
 そしてついに怒りが頂点に達した。

 僕は、ゲーム一般でいう魔王がどのような人物なのかを知らない。
 だけど、目の前にいる人物の形相は僕が想像した敵役・魔王の顔、そのものだった。

「1度ならず2度までも…このクソガキどもがあぁ!」

 蝙蝠の翼を広げ、クルクルと回りながら上昇する王我。
 僕達の遥か真上で右手を高く掲げる。

 この動作は見覚えがある。

 そう思った瞬間、王我を中心に闇が広がり、僕達は宇宙空間に投げ出された。

 そうか、以前魔王が使った技だ。

 すぐに僕達めがけて地球が転がってきた。

 跳ね飛ばされる僕達。
 鷹貴はまた地球に潰されていた。

 僕達が跳ね飛ばされた後、元の奇妙な空間に戻った。

 そこにすかさず王我が同じ攻撃を仕掛ける。
 再び跳ね飛ばされ、潰される僕達。

 これはマズイ。

 僕達の攻撃は遥か上にいる王我には届かない。
 いや、本当は届く攻撃もある。
 だけど王我は、その攻撃に必要な時間を僕達に与えるつもりがない。

 以前の魔王はゲームキャラクターだった。
 だから、戦いの時は交互に攻撃しあった。
 それが最低限守るべきルールだったからだ。

 だけど今目の前にいる魔王、王我にはこのルールを守る必要がないのだ。



「力、最強魔法です!」

 跳ね飛ばされ、転がりながら、僕は声が聞こえた方向を見る。

 扉から少しだけ顔を出し、長老が僕を見ていた。
 手元は見えない。
 だけど、カチカチという音が聞こえる。
 緊急用プログラムで何かを入力しているらしい。

「以前使用したのを覚えていますか?
 山が消し飛んだあの最強魔法です。
 あれから調整していなかったので、あの魔法なら一撃で魔王を倒せます!」

 山が消し飛んだあの魔法。
 あれを使えば、1度の隙をつくだけで王我を止めることができる。

 本当は2度と使いたくないと思っていた。
 でも今はそんな事を言っている場合じゃない!


最強魔法


「そんな呪文を唱える隙をワタシが与えると思うか?」

 再び右手を掲げる王我。
 再び宇宙空間に投げ出される僕達。

 でも、僕達はレベル99だ。

 多少の攻撃で倒される事はない。
 僕が集まって欲しいと叫ぶと、跳ね飛ばされ、潰されつつも、徐々に全員が近寄ってきた。

 どうにか集結したみんなに、僕は簡潔に説明した。

 策はあった。
 ブンが今まで話してくれたGAME―パラレル―の内容が駆け巡る。

「僕が呪文を唱えだしたら、次の事をやってほしいんだ」

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