その時だった。

 ゴゴゴという地響きがして地面がガクガクと揺れだした。
 僕は立っていられなくなり、ドスッと尻餅をついた。

グラグラグラ

「アイタタ。じ、地震だ」
「地震?どうして地震なんかが?」

 空中に浮いているブンは地震の影響はうけていない。
 しかし、驚いてはいるみたいで声が上ずっている。

 遠くをみると山や海も揺れている。
 しかし、木や建物が倒れる衝撃音は聞こえない。
 この世界が創られたモノだからだろうか。
 この感じでは地震のせいで津波が来るという事もないだろう。



 しばらくしてやっと揺れはおさまった。

「一体何だったんだろう?ゲームにバグが発生したのかな」
とブンは首をかしげた。

 僕はブンの言っている言葉の意味すらわからない。
 どうやらゲームに異常が発生したらしいという事だけは何となくわかる。

「あの、悩んでいるところ申し訳ないんだけど僕を元の世界に戻してくれないかな」

 ブンにおそるおそる話しかける僕。

 この世界に異常がおきたらしい事は僕でもわかるけど、それよりも僕ははやく元の世界に戻りたかった。
 ・・・申し訳ないけど。

「うん、わかった。記録はさっき完了したから後は帰るだけだよ」
「ごめん、何か起きたみたいだけど」
「いいよ、これは僕たちが処理する問題だろうから。じゃ、またね」

 ブンが腕を一回クルッと回すと僕の周りが輝きだした。

 周りの風景が波立ってくる。
 これはこの世界に来た時と似ている。
 このまま波立ちが激しくなって、僕は元の世界に戻る事ができるのだろう。

 波立ちはだんだんとおさまり、気がつくと僕の目の前に広がるのはコンピューター群・・・ではなく前と変わらず山と海の風景だった。
 ブンもいる。

「あの〜、元の世界に戻ってないんだけど・・・」
「あれれ?」

 再びブンは腕をクルッと回した。

 しかし、結果は一緒だった。

 ウ〜ンとブンはうなる。

「これはもしや重大なバグが生じたかな?」

 もしや・・・それって、
「元の世界に戻れないって事?」
「・・・」

 ブンの返事は無い。

 これは非常事態かも。
 まずい、帰って勉強どころではない。

 ブンはしばらく考えた後、こう答えた。

「いや、そんな事ないよ。さっきも言ったでしょ。元の世界に戻るには2つ方法があるって」

「あ、そうか」

 そういえばそうだった。

 ・・・確か2つ目は、
「敵にやられて死ねば帰れるんだっけ?」
「そうだよ。その辺りを歩いていたら敵に遭遇するから。わざと倒されたら帰れるよ」

 なるほど無抵抗で敵に攻撃されると簡単に死ぬ事ができる。
 それはとても簡単な方法だが、少し気になる事がある。

「はい質問」
「何?」
「今、ゲームに異常が発生しているんだよね」
「まだ確認はしていないから断言はできないけど、おそらくそうだと思う」
「その状態で敵にやられても本当に死んでしまうって事はない・・・よね?」
「・・・」

 またもや返事が無い。

 どうやらプレイしている本人が死なないという保証はないらしい。

 本格的にこれは非常事態だ。

「実際に試してみたらいいよ。本当にやられたら死ぬかどうか」
「やだよ」

 非常に無責任な事をブンに言われた。

「でも、そうしないと元の世界に戻る方法はないよ」
「う・・・」

 そう、それが問題なのだ。

 これしか方法が無いと言われればこの方法を実践してみるしかない。
 これぞ真の死亡遊戯。
 まずい、泣きそうだ。

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