「あーっ!」

 いきなりブンが大声を発した。
 びっくりして涙がこぼれそうになったじゃないか。

「もう1つ元の世界に戻る方法があったよ」
「!」

 目を1度ゴシッとこすった後、僕はブンにつかみかかった。
 とはいっても相手は小さいから握りかかった(?)というほうが正しいだろう。

「そ、その方法って何?」
「ちょっ、ちょっ、潰れる、潰れるって」

 ブンが僕の手の中で苦しそうにもがいている。

 ああ、いけない。
 ブンが潰れたら帰る方法がわからなくなる(非情)。
 僕が握りしめた手を開くと、ブンがフラフラと飛び上がった。

「ごめん、つい」
「ついで人(?)を潰さないでよ。もう・・・」

 ゼイゼイと苦しそうだったが、一息ついてブンはこう言った。

「ゲームクリアすれば帰れるよ」
「げ、げぇむくりあ?」

 ブンはまたですかという顔をした。
 仕方ないじゃないか、知らないんだから。

「ゲームクリアって言うのはゲームを最後までやり終える事だよ。
 つまり、ゲームを終わらせてしまえば君は元の世界に戻れるんだ」
「ゲームを終わらせるって具体的にはどうすれば・・・?」

 僕のその問いにブンはハァとため息をついた。

「力、実は僕の話聞いてなかったでしょ」
「え?いいや、聞いてたよ」

 いきなり何なんだ?
 失礼な物言いだな。

「それじゃあ、さっき僕が話したプロローグ話してみてよ」
「構わないけど?確か・・・」


 神々に愛された大地、その名もパラレル。
 その地に住む人々は笑顔が絶えず、一日一日を幸せに過ごしていた。
 しかし、その日々も一人の邪悪なる者の出現により終わる。
 邪悪なる者の名は魔王。
 その者が解き放った魔物は人々を恐怖と絶望の底に陥れた。
 それを見て笑うのは魔王ただひとり。
 人々は待ち続ける。魔王を倒す勇者を――。


朗々


「・・・だったと思う」

 暗記していた内容を伝えると、ブンは固まってしまった。

「あれ、どこか間違えた?」
「あってるよ。一字一句間違いは無い」
「よし、大正解」

 僕はコブシをグッと握り締めて小さく喜びの感情を表現した。

「どうしてそこまで覚えてて、ゲームクリアの方法がわからないかな」
というブンの疑問に僕は簡潔に答えた。

「君の話した内容を記憶しただけで内容はあまり理解していないからね」
「何だよそれ」

 即座にブンのツッコミがはいった。

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