3.必要なのは仲間の方々
とりあえず一番近くの村に行く事になった。
ブンも僕について来るそうだ。
「僕は君のナビゲーターだから、この世界にいる限りはついて行くよ」
という理由だ。
村に行く道のりの途中、僕はブンにひとつ忠告をされた。
「僕考えたけど、君には仲間が必要だね」
「仲間?」
「今のゲームの状況を調査したら、君以外に3人の人間がゲームをプレイしていたんだ。
その人達と手を組んだほうがいいよ」
それはどうして、とブンに訊こうとした。
だけどその言葉を口にするより前にピギャ―という雄叫びが聞こえ、僕とブンは声がした方向を向いた。
そこには怪物がいた。
人の頭より少し小さめのボールに目玉が1つついて、それが吠えている。
「?」
これは何だろう?
この世界の生物だろうか?
僕と目玉ボールはしばしジーッと見つめ合った。

「コラコラ。ボーっと見つめ合わない。敵だよ、敵」
「え、敵?これが敵?」
僕がいきなりの敵登場に混乱している間に目玉ボールはころころと転がりながら僕に向かってきた。
不意討ちだよ。
そして「ドスン!」と僕にぶつかった。
「おう!」
体当たりをされた僕はヨロヨロとよろめいた。
小さい体のわりに力は強いぞ、このボール。
「ほら、君も攻撃しなきゃ」
「僕が攻撃?どうしたらいいんだよ?」
とりあえず近くに転がっていた小石を投げてみたけれど、目玉ボールには当たらなかった。
「違う違う!あーあ、攻撃ミスだ」
ブンが文句を言いながら説明を始めた。
「君が今持っている武器で殴るか魔法で攻撃するんだ。
君の場合なら魔法が良いかもしれないね」
「ま、魔法?」
僕がそんなもの使えるのか?
「魔法の本、最初にもらったよね」
「ああこれ?」
僕はゲーム開始時からずっと小脇に抱えていた本を開いた。
本の最初のページにチラッと目を通した瞬間、また目玉ボールがドスンと僕に体当たりをしてきた。
その衝撃で本が僕の手から離れ、近くの草むらに落ちてしまう。
「あ!」
「何してるんだよ。あの本に書かれている呪文を言わなきゃ魔法は使えないよ!」
ブンが怒る。
「あの本の中の言葉を言えばいいんだ」
「そうだよ。でも、あの本を見なきゃ言えな――」
僕はブンの怒号を無視し、言葉を紡いだ。
「“あらゆるものを燃やし尽くす力を持つ炎の精霊よ。
あなたの一滴の力を今ひととき我に貸したまえ。プチファイヤー”」
僕が早口で最初のページに書かれていた言葉を言い終える。
すると僕の握っていた杖から小さな炎が吹き出した。
そしてその炎は目玉ボールにものすごい勢いで迫り、衝突した。
目玉ボールは全身から炎を吹き上げながら大きな悲鳴をあげる。
「うわわっ」
僕はその光景に驚いて腰がぬけた。
教育ママさんなんかから「教育に悪い」と苦情が殺到しそうな光景だ。
目玉ボールはひとしきり苦しんだ後、バシュッという音と共に跡形もなく消えた。
すると僕の後方でパチパチとブンが拍手をした。
「お見事」
「あ、ああ・・・どうも」
返事をしながら僕は立ち上がった。
「すごいよ。本も見ないでよく言葉が言えたね」
「僕暗記は得意だから」
何せ勉強が趣味だし。
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