ゲームキャラクターとの会話方法を僕はとりあえず理解した。

 更に詳細なプレイ方法は仲間予定者を捜しだすのが先決なので、後々教えてもらう事にした。



「うん、間違いなくこの村に3人いるね。こっち側にひとつ反応があるよ」

 ブンは他の人の居場所がわかるらしく、触覚をピコピコと動かしながら村の中をズンズン進む。
 僕はその後を息を切らしながら必死についていった。

「よし、もうすぐそ・・・うわぁぁ!」

 突き当りを右に曲がったところでブンは大声をだした。

「何、どうし・・・!!」

 ブンに続いて右に曲がった僕は目の前の光景を見て、あやうくブッと鼻血を出しそうになった。

 そこはある意味天国・・・いやいやいや妙な空間になっていた。

 ゲームキャラクターが道を歩いているのは先程の場所と変わりない。
 しかし、そこを歩いている女の人達は全て下着姿だったのだ。

マジで血吹く5秒前

「こ、ここここれは一体何事?」

 油断すると赤い液体が流れ出そうな鼻を必死につまみながらブンに訊ねる。

 ブンは冷静にこの光景を見ながら(よく冷静に見ていられるもんだ)、しばらく考えた後にこう答えた。

「おそらく僕達の捜している人の仕業だね」

 この光景を作りあげた(個人的には賞賛したい)容疑者を追いかけつつ、ブンにそう推理した理由を簡単に説明してもらった。

 ゲームキャラクターというのは設定された動作しかできない。
 そしてゲームキャラクターの過半数は「服を脱ぐ」という動作は設定されていない。
 だからこんな光景を作りあげる事はゲームキャラクターにはできず、必然的に現実世界の人間の仕業と言う事になる。
 そういう事らしい。

「ん?そういえばブンもゲームキャラクター?」
「そう、僕もゲームキャラクターだよ。
 でも僕は一般のキャラクターと違って自己学習機能がついているんだ」
「自己学習機能・・・って何?」
「人工人格にあたるのかな。
 その機能があると現実の人間と変わりない思考ができるんだ。
 だから、君とも何の違和感も無く会話ができているんだよ」
「へー」

 そんな話をしているうちに目的地に着いたらしく、ブンが立ち止まった。

「さあ着いた。ここにお仲間予定者がいるよ」

 ピッとブンが示したのは建物と建物の間の細い路地。
 そこには山のように洋服が積み重なり、その奥でブツブツと何か独り言を言っている人がいた。

 僕はその人にとりあえず声をかけてみた。

「あの・・・」

 その声にピクッと反応して、目の前の人は僕の方を向いた。

 僕と同じ年頃の女の人だった。
 ショートカットが少し長くなったような髪型で髪の色は真っ黒だ。
 瞳の色は灰色。
 少しつり目できつい感じに見えるが綺麗な顔立ち。
 下は股下で役目を終えたすごく短いズボンをはいている。
 上は胸の上から下のみで役目を終えている短い服の上に上着を着ているという露出過剰な格好だ。

 その女の人は僕の方を見て怪訝な顔をした。

「何?」
「あの、あなたも外の世界から来た人ですよね」

 僕がおそるおそる訊ねると彼女の顔が更に険しくなった。
 怖い。

「あんたもこの世界に閉じ込められたマヌケなわけ?」
「マヌケ・・・まあそうなると思います」

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