朝食も食べ終り、さっそく僕達は洞窟に向かう事にした。

 のんびりと歩きながら洞窟を目指す僕達。
 幸運にも途中で敵と遭遇する事はなかった。
 日差しも暖かく、弁当を抱えて歩く姿はまるでピクニックのようだ。

 でも僕と鷹貴はどんよりしていた。
 ああ、ショックから立ち直れない。

 程なく、僕達は洞窟にたどり着いた。
 洞窟がとてもわかりやすい場所にあったため、何の苦労も無かった。
 このわかりやすさからして、この洞窟はゲーム初心者向けかもしれない。

「この洞窟の奥に貴重な薬草があるので、それを採ってくるよ」

 ブンがこれからの冒険の詳細を語り、次にこの“GAME―パラレル―”内での戦闘方法を説明した。

「ねえ、なんでこっちと敵で交互に攻撃なわけ?
 1匹の時はみんなで囲んで袋叩きにすればいいじゃない」
と恐ろしい事を言っているのは神楽。

「敵が私に向かってきたらどうすれば・・・え、どうして攻撃を避けられないの?」
と言っているのは由宇香さん。

「このHPっていうのが0になりそうだったらどうすりゃいいんだ?」
と言っているのは鷹貴。

 ブンが、
「今までに1回でもゲームをやった事のある人ならすぐにわかる簡単な戦闘システムだよ」
と言っていたけれど、この通り。

 つまり僕も含めて皆ゲームそのものの初心者なのだ。
 今までの人生の中でゲームという娯楽道具に触れた事の無い人ばかりが今ココに集結している。

 僕を担当していたブンだけでなく、他の人についていたブンもゲームの内容説明に四苦八苦したそうだ。

 これが、昨日ブンが言っていた絶望的な話のひとつである。

 全員がゲーム初心者のため、思いもよらないミスでゲームオーバーになる可能性が高いとブンに言われてしまった。

 しかも絶望的な話はこれで終わりではない。



 「戦闘方法が何となくわかった気がする」という心もとない状態で僕達は洞窟の中に進入した。

 ・・・すごく不安だ。

 暗い洞窟の中を歩く僕達。
 暗いうえにじめじめしているなんて気味が悪すぎる。

 そのためか、少しの物音で驚いてすぐに抱き合ったりした。

 残念な事に僕は鷹貴と抱き合い、神楽と由宇香さんは2人で抱き合っている。

何だこれ?

 何が悲しゅうて男とこんなにべったりくっつかなくてはならないのだろうか。
 しかし恐怖が先立っているので背に腹は代えられない。

「ねぇ」

 ボンヤリとした光の中にブンが浮かび上がった。
 怖い。

 それは他の3人も同じだったようで、みんな目が大きく見開いている。

「な、何!」

 神楽が由宇香さんにべったりとくっついたまま怒鳴った。

「目の前に敵がいるよ」
「え?」

 僕はブンが示した方向を見た。

 そこには地面にへばりつくように目玉がひとつあった。

 以前僕が戦った目玉ボールと似ているけれど、少し違う。
 前回の目玉ボールは本当に球体だった。
 だけど今回の目玉は丸ではない。
 あの目玉ボールを熱して溶かしたような状態だ。

 このじめじめとした洞窟にピッタリなじめじめとした目玉ボールだ。

「ほら、訓練。今からこの敵を倒すよ」
「えー、やだよ。気持ち悪い」

 神楽が文句を言った。

「私もこの子はネトネトしていそうで触りたくないわ。他の子で訓練しましょうよ」

 由宇香さんもやんわりと文句を言った。

「何言ってるんだよ。この洞窟の敵はみんなネトネトしてるよ」
「げ。それじゃあ、どうしてこんな場所で訓練しようなんて言いだしたの?」

 神楽の最もなご意見だ。

 僕もわざわざネトネトしている敵で戦闘の訓練をしたくはない。

「わ・ざ・とココを選んだんだよ。いい?
 ネトネトしているくらいで文句を言ってちゃこれから本当に大変だよ。
 ネトネトどころか腐って虫がわいている敵に攻撃しなくちゃいけない事もあるんだから」

 嫌な情報を聞いてしまった。

前へ  次へ

戻る