「どうして長老を捜さなくちゃいけなくなるのかなぁ。
 長老なら長老らしく、死にかけのまま椅子にでも座ってればいいのに!」
「神楽、それ言いすぎだから」

 つい、つっこんでしまった。

 神楽は本当に発言が過激すぎる。

 その横顔は怒っていても綺麗だ。
 しかし綺麗なその分、逆に恐ろしさが増す。

 僕達は現在、妖精の村内で長老捜索をしている。

 この村での目的は長老の頼みを聞く事。
 それなのに肝心な当人がいないのだ。

 すでに僕達の疲れはMAXだ。
 地面の上でも構わないから、今すぐココで眠りたい。

「捜すのもゲームの内って事?」

 僕はゼエゼエと荒い呼吸をしながらブンに訊ねた。

「違う、こんなイベントは無いよ。恐らく長老の仕業だね」
「長老の仕業?」

 僕達4人は意味がわからず首を傾げた。

 しかし、もはや恒例となった僕達のリアクションにブンは全く反応しない。
 ブンはそのまま説明を続けた。

「妖精の村の長老も僕と同じで自己学習機能がついているんだ。
 だから自分の意思で行動ができるんだよ。全く何を考えているのかな?」

 ブンの説明を聞いて僕は長老捜しの案を1つ思いついた。

 学習機能がついているなら捜索が少し簡単になるかもしれない。

 話しかけて(厳密には肩をぶつけて)反応が人間に近い人を見つければいい。
 長老でないなら業務的な返事しかしないはずだ。

 この案を提案するとみんな快く賛成してくれた。

 全員で手分けして、村中の老人に声をかけた(というか肩をぶつけた)。
 しかし、全員業務的な答えしか返ってこなかった。

「学習機能がついてないね。この人も長老じゃないよ」

「だー!それじゃあ一体長老はどこに行ったんだよ?」

 ブンの「長老じゃない発言」に、鷹貴が地団太を踏みながら吠えた。

「もういいよ。今日は寝る」

 神楽はフラフラしながら旅館に向かった。

「それなら私も」
「じゃあ、オレも」
と由宇香さんも鷹貴も旅館に向かった。

 こうなってしまうと僕も今日は捜索をあきらめて休むしかない。

「僕も戻るか・・・」

 みんなに倣って、僕もフラフラしながら旅館に戻る事にした。

 旅館への道のりがとてつもなく長く感じた。
 ああ、ベッドが遠い。

 フラフラしながら道を歩いていたせいか、村の入り口付近で僕は人と衝突した。
 僕はドスンと尻餅をつき、衝突した相手もコロコロと転がった。

 僕が衝突した相手はどうやら子供のようだった。

 耳はココの村人と同じ形だけど、体つきがどう見ても子供だ。
 クリクリとした大きな目と伸びきっていない手足。
 10歳前後の子供に見える。

 あれ、でもこの顔をどこかで見た気がするぞ。

妖精の子供?

 僕はフラフラしながら立ち上がり、転がった子供に手を差し伸べた。

「大丈夫?」
「はい、平気です」

 子供は僕の手をつかみ、ヨッコラショと起き上がった。

「お疲れみたいですが、歩く時はしっかりと前を向いてくださいね」
と丁寧な言葉ながらも文句を言われた。

「あ、ああ。ゴメン・・・」
と言いながら、僕はあることに気がついた。

 この子供との間に普通の会話が成立している。
 キャラクターは業務的な会話しかしてこないはずだ。

 ということは―

 去ろうとした子供の腕を僕はギュッと握った。

「な、何ですか?」

 いきなり腕をつかまれて驚く子供に僕は訊ねた。

「もしかして君、長老?」

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