7.魔王城内では息をあわせて


 小鳥がチチチと外で囀っている。
 いつもと同じ、さわやかな朝だ。

 この現実世界と相違ない朝も今日で見納めとなるに違いない。

 僕達は今日、魔王の城に向かいゲームクリアをする。

 朝食後、僕達は長老に案内をしてもらい、迷うことなく魔王の城へのワープポイントに到着した。

 妖精の村から徒歩5分という便利な場所にあったため、敵に遭遇する事もなかった。

 ワープポイントは妖精の村の周囲にある森の一角にあり、その場所だけ木が生えていなかった。

 地面には六芒星をぐるっと円で囲んだものがある。
 これが俗に言う、魔方陣なのだろうか?
 コレがワープポイントらしい。

「この中に入り5秒待つと、魔王の城付近の建物にワープします」
と、魔方陣を指し示しながら長老が説明してくれた。

「そう、わかった。昨日会ったばかりなのに色々とありがとう、長老」

 神楽が素直に感謝の言葉を述べると、長老はニッコリと笑った。

「それぐらい両親にも素直になればいいと思いますよ」

 長老から笑顔で忠告を受けると、神楽は顔を真っ赤にしてプイッとそっぽを向いた。
 それすらも長老にとってはおかしかったようでクスクスと笑っていた。

 しかし、突然長老は真剣な顔に戻り、こう言った。

「僕はここまでしか協力できません。後はあなた達の力次第です。頑張ってくださいね」

 その激励の言葉に、
「おうよ」
と鷹貴が答え、

「私もできるだけ頑張るわ」
と由宇香さんが答え、

「あんたの努力は無駄にしないよ」
と神楽が答え、

「本当にありがとうございました」
と僕が答え、深々と礼をした。

 魔方陣の中には「せ〜の」という掛け声と共に4人一斉に入った(怖かったから)。

 長老の言ったとおり、中に入って5秒経つと魔方陣が輝きだし、陣の外の光景が歪みだした。

 この光景は僕が現実世界からこの仮想世界にやってきた時と感じが似ていた。
 現実世界から仮想世界へ転送する方法と同じ原理でワープするのかもしれない。

 僕達がワープする直前まで、長老はずっと手を振ってくれていた。

さようなら

 魔方陣の輝きが消えると、僕達4人(+ブン)はボロボロの建物の中にいた。

 僕達の足元には森の一角にあった魔方陣と同じものがある。
 このボロボロの建物の中には、今足元にある魔方陣以外にもたくさんの魔方陣があった。

「この世界の様々な場所からココにワープできるようになっているんだ。
 この建物はそのためのものなんだよ」

 ブンが説明をしてくれた。
 今まで長老に説明役を奪われていたので必要以上に張り切っている。

「だけど今回このワープポイントを使えたのは特例。
 だから他のワープポイントは一切使用できないからね」

 確かにそのようだ。
 僕達の使用した魔方陣は虹色に輝いているが、他の魔方陣は青色だ。
 さっきから神楽が色々な魔方陣の中に入っているが何の反応も無い。

「あと君達が踏んでいた魔方陣の中にまた入ったら駄目だよ。
 またさっきの妖精の村近くの森にワープしちゃうからね」

 なるほど、それは先程の別れの挨拶が台無しだ。
 しかも格好悪い。
 気をつけよう。

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