そんな緊迫感の無いやりとりをしている間に魔王の攻撃が始まった。

 魔王がニヤリと薄笑いを浮かべ、右手を高く掲げる。
 すると、掲げられたその手を中心に闇が広がった。

 僕達は先程までいた城内とは異なる、闇の空間に投げ出された。

 ・・・いや違う、闇じゃないな。
 信じられないけれど、ここは・・・この空間は宇宙だ。

 強い光を放つ太陽や輝く星々が点々と見える。

 これは一体どういう事なのだろう?

 この状況に、僕達全員が固まってしまった。
 少しでも動けば、この果てしない宇宙空間に投げ出されて宇宙の塵になってしまいそうな気がした。

 身動きのとれない僕達に、すぐ追い撃ちがきた。

 惑星、いや正確には地球が僕達に向かって転がってきたのだ。

「オウッ!」

 転がってくる地球になすすべもなく跳ね飛ばされる僕達。

 鷹貴は跳ね飛ばされるよりも状況が悪く、転がってきた地球に潰されていた。

 僕達を跳ね飛ばした後、宇宙も地球も消えて、周囲は元の城内に戻った。

 僕、神楽、由宇香さんはすぐに立ち上がる事ができたけれど、鷹貴は倒れたままだ。

 倒れたままの鷹貴に僕は不安を感じ、駆け寄ろうとした。
 その途中で鷹貴はムクッと起き上がった。

「おのれ・・・」

 起き上がった鷹貴の瞳には明らかに怒りの色が浮かんでいる。
 怖い。

「魔王の野郎!絶対に許さんっ!」

 火を噴き出しそうな勢いで鷹貴は立ち上がり、
「さあ力、最強の呪文を使って奴を倒すぞ!」
と叫んだ。

 ・・・人任せだ。

「自分で倒せって」

 僕がつっこむ前に神楽がつっこんだ。

「何を言うか。オレは商人だぞ。奴を倒せる力などあるか!」
「『銭投げ』使えばいいと思う。
 あれって所持金が多いと、ダメージも強いってブンが言ってたし」
という僕の提案はすぐに却下された。

「無駄遣いはオレの1番の敵だ!」

鷹貴・最大の敵

 彼にとって、1番の敵は目の前の魔王ではなかったようだ。

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