こんな感じの最終戦は長く続いた。
最終戦の敵なだけあり、HPが高すぎるのも原因の1つだ。
しかし魔王のHPが高すぎる事よりも、僕達4人の行動に問題があった。
神楽はチビチビと魔王を切りつけた。
鷹貴は『銭投げ』という強力な攻撃方法を頑なに拒否するため、やはりチビチビと魔王を殴った。
由宇香さんはもとより攻撃の仕様がない。
そして僕は僕で、魔王がスプラッタになるのは嫌なので、中程度の魔法でしか攻撃しなかった。
これでは時間がかかっても仕方がない。
僕達の生死がかかっているのに、最終戦までもが緊迫感を感じさせないけれど、これで良いのだろうか?
結局いつものような耐久戦になってしまった。
全滅しなかったのはレベルを99まで上げてくれた長老のおかげだろう。
これからは長老に足を向けて眠れないな。
あ、でも現実世界に戻ってしまうと長老の方向がわからない。
その時は“GAME―パラレル―”に足を向けて眠らなければ良いのかな?
鷹貴の金袋による一撃で、魔王はすごく苦しみだし、
「グアァ、ま、まさか私がこのような下等な生き物に倒されるとはぁぁ・・・!」
と悔しがりながら消滅した。
消えてくれてよかった。
体がその場に残っていたら、後味が悪かっただろう。
その後はものすごい騒ぎとなった。
魔王が消滅した瞬間、部屋の中に大勢の兵隊が入ってきた。

いつの間に、こんな大勢で城に入って来たのだろうか?
彼らは僕達1人1人を勇者だ、勇者だと褒め称えながら胴上げした。
この異常な状況をどう語れば良いのだろうか?
僕には良い表現方法が見つからない。
すし詰めになるほど、大挙してやってきた兵隊達は僕達全員を担いだまま城の外に連れ出した。
そして、そのまま王様(途中の話を省略した僕達には誰なのか全くわからない)の住む城まで運ばれた。
そこで盛大なパーティ(今度は城の人ですし詰め状態)が開かれ、その後やっと解放された。
散々もみくちゃにされ、ぐったりした僕達にブンが恭しく礼をした。
「途中の経過はどうであれ、ゲームクリアおめでとうございます。
これでこの“GAME―パラレル―”の物語は終了です。
最後までプレイしていただき、誠にありがとうございました」
そこまで言って、ブンは一息ついた。
そしてその後、こう言葉を続けた。
「そこで、クリアされたあなた方には特典がございます」
「特典?特典って何?」
「さあ?僕もよくは知らない。
クリアした人間にこう言えって命令されてるだけだもん」
僕の質問でブンはいきなり元の口調に戻った。
マニュアル通りのセリフだけしか丁寧な言葉は使えないようだ。
「これでゲームクリア。元の世界に戻る扉が君達の前に現れるよ」
ブンがそう言うと、僕達の目の前にいきなりドアが出現した。
「おおっ」
驚く僕達。
ブンは少しだけドアを開いて中を覗いた後、僕達に向き直った。
「うん、キチンと動いている。これは元の世界につながっているよ」
僕達は顔を見合わせて喜び合った。
僕達の間にあったギスギスとした空気は、魔王との戦い、そしてその後の大騒ぎの間に消えてしまっていた。
そこだけはあの大騒ぎに感謝しないといけないかもしれない。
「さて、それじゃあそろそろ帰るか」
鷹貴がドアを開きながら言った。
僕達も頷く。
「ブン、今まで色々とありがとうございました。色々迷惑かけてしまったみたいね」
由宇香さんがすまなそうに言った言葉にブンは首を振った。
「全然迷惑なんかじゃなかったよ。だってこれが僕の仕事だもん。
でも次に来る時は緊急用プログラムなんか使わないで遊んでね」
「考えとく」
神楽がそっけない言葉を返した。
それでもブンは嬉しそうだった。
「じゃあね、また会おうね」
ブンが手を振る。
それに負けじと僕もブンガブンガと手を振った。
「本当にありがとう、ブン」
その言葉と同時にみんなドアを開け、中に入った。
僕達はやっと元の世界に戻る事ができるんだ。
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