・・・。
気がつくと僕は一面の闇の中にいた。
自分の体すら確認できない。
みんなが何処にいるのかも、全く把握できなかった。
「おーい、神楽、鷹貴、由宇香さーん。どこー?」
と叫んでみた。
「何か用?」
「うぉ、びっくりした」
「はーい、私はここよ」
返事は意外と近く・・・というか真横から返ってきた。
だけど、彼らの姿を目で確認する事はできなかった。
「これは一体どういうことなんだ?」
「もしかして元の世界に戻るのを失敗して・・・」
「違う」
鷹貴と由宇香さんが不安げに発した疑問に、すぐ答えが返ってきた。
それは僕でも神楽でも鷹貴でも由宇香さんでもない声だった。
「だ、誰?」
神楽の問いに、誰かがシクシクとすすり泣くのが聞こえた。
「『誰?』はねーだろ、『誰?』は。初対面でもあるまいに。
あ、でも顔は合わせてなかったな」
先程まで泣いていた誰かはワハハと大声で笑いだした。
この笑い方はどこかで聞いた気がする。
・・・あ。
「確かこのゲームの最初に出てきた
“GAME―パラレル―”を統括するとかいう人?」
「そう、正解!さすが『魔法使い』だねぇ。記憶力も抜群だ!」
再びワハハと笑う声が聞こえた。
「それで、その統括している人がわたし達に何の用なわけ?」
神楽が疑問を投げ掛けると、その声は笑うのをやめた。
「いや、帰る前に忠告しておこうかなーと思ってさ」
「忠告?」
「そう、忠告。
ゲームの途中に現実世界に戻る事ができなくなった理由をあんた達は知らないよな。
アレは現実世界で誰かがそうなるように操作したからだ」
現実世界で誰かが操作した?
誰が、一体何故そんな事を?
僕の混乱を察する事もなく、声の主は話を続けた。
「しかも内部からはその設定を変更できない。
かなり前から用意されていたものだ。姑息だよな」
チッと舌打ちをする音が聞こえた。
「どうしてそんな事を?」
問うだけではなく、声の主につかみかかりたかった。
だけど、今の僕にはつかみかかるために必要な実体がない。
それは他の3人も一緒だ。
「・・・」
声は答えない。
そして突き放すようにこう言った。
「自分で知ることだな。自分の目で現実世界を確認してこい。そして理解しろ。
俺が言ったって信じないさ」
「・・・あんたは知っているみたいだな、その理由」
「ああ」
「教えないのにどうしてココに呼んだ?」
鷹貴が問う。
「言ったはずだ。忠告するためだよ。あんた達には心構えが必要だ」
「心構え?どうして?」
「それもノーコメントだ。・・・そうだな。
あっちの世界はあんた達が知っている世界ではなくなっている、とでも言っておくよ」