「先程は失礼した。初めての戦闘で舞い上がっている馬鹿者がいるもんでな。
 全く!この建物内部では敵かどうかを確認しろと言っていたんだがな。
 奴にはそれ相応の罰を与えるので許してほしい」

 とうさんが鷹貴と神楽に深々と陳謝した。

 その陳謝によって、発砲の件で呆然としていた鷹貴が我にかえった。
 鷹貴は目だけでキョロキョロと周囲にいる兵士を確認した後、とうさんに質問をした。

「これは、この惨状は一体、一体何が起きたんですか?
 オレ達のいない間に一体何がっ!」

 とうさんに掴みかかりそうな勢いで鷹貴はまくし立てた。
 その狼狽ぶりには、先程と同じ混乱が見て取れる。

 とうさんは落ち着き払ったまま、鷹貴に歩み寄って肩をポンと叩いた。

「外にある死体の山を見てしまったようだね。
 そうだよ、君達が“GAME―パラレル―”の世界に行っている間に、この世界は一変した」

 死体・・・の山?

 そうか、鷹貴はそれを見てしまった。

 だから、あんなにも動転していたんだ。
 だから、僕達に外を見るなと言っていたのか。

 だけどその事実を知った今、とうさんに訊きたい事が1つできた。

「とうさん、僕がいない間に一体何が?」

 とうさんと鷹貴の間に割り入って、その1つを僕は訊ねた。

 先程の鷹貴に対する応対と同じく、とうさんは落ち着き払ったまま答えた。

「クーデターだよ」
「え?」
「クーデターが発生したんだ」

 クーデター・・・言葉だけは聞いた事がある。

 武力等の非常手段を使うことで政権を奪うこと。
 それがクーデターだ。

 クーデターがこの国に発生した?

 どうして?
 何故?
 一体誰が!

「誰ですか!こんな事を始めたのは一体誰なんですか!」

 僕の訊きたかった事を叫びながら、神楽がとうさんに詰め寄った。

 とうさんはその問いにも静かに、落ち着き払ったまま答えた。

「ワタシだよ」

 僕の思考が固まる。

 いや、きっと僕だけではない。
 神楽も鷹貴も由宇香さんも微動だにしなかった。

「い、今何と・・・おっしゃったのですか?」

 聞き間違いを期待して、由宇香さんが同じ内容の質問を訊ねた。

 それにもとうさんは静かに、そしてにこやかに答えた。

「ワタシだ。ワタシ、郡藤王我がこのクーデターの首謀者だ」

目の前の首謀者


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