墜落した本はパラパラと数ページめくれあがった後、エロテクニック図説を開いたまま動きをとめた。
その本の様子を眺めめつつ、おれはしばし考えた。
この本がおれにとって不本意なのは間違いない。
そう遠くないうちに売り飛ばすだろう。
まあ、それはそれとしてだ。
本来の目的だった女をおとす方法が全く書いていない訳ではない。
どう考えてもエロのおまけ、余白埋めに近いが一応は書いてある。
ならば、そこは読むべきだろう。
一口解説だが、それでルシャラがおちる可能性だってある。
少しでも知識は多い方が良い。
当然エロ箇所は読むつもりはない。
うむ、何故おれはココまで強くエロを拒否しているのだろうか?
いつもは飛びつ…うぉっほん!
エロを求めていない時にエロが登場した事がそんなに不本意なのか、おれは。
自分の思考に疑問を感じつつも、床に落ちた本を拾いあげた。
、そして、エロの絡まないページを開き、おれは腰を落ち着けた。
それから、1時間が経過した。
エロの絡まない項目は、今全て読み終えた。
しかし、おれは本を閉じずに悩んでいた。
つまり…いや、察してくれ。
仕方ないじゃないか。
本能だ。
男の本能だ。
そこにエロがあれば男は飛びつきたいもんだろ。
読みたいもんだろ。
なぁ!
枯れた爺さんか根本的な趣味が異なる奴でもない限り読みたいよな?
……都合の良い言い訳はこれぐらいにしておこうか。
空しくなってきた。
この類の言い訳なら永遠に言い続けられる自信があり、キリがない。
こんな感じで自分に言い訳をしつつ、おれはこの本のメイン部分の読書に取り掛かろうとした。
その時、階段を上るギシギシという音が聞こえた。
こういう時のおれは、何かに没頭しつつも周囲の小さな音にも気を配れる。
この音の主がおれに用件がある場合、速やかに証拠隠滅する必要があるからな。
おれは念の為、ベッド下に本を隠した。
そして、おれの部屋を通過する音が聞こえる事を願った。
しかし、程なくしてコンコンとおれの部屋のドアがノックされた。
極めて冷静に、
「はい」
と答え、おれはドアを開けた。
ドアの先には自分の姿が隠れてしまう程大きな紙袋を抱えたエイミーが立っていた。
エイミーは紙袋の横から顔を出し、にっこりと微笑んだ。