エピソード121(少林寺からの果たし状)
小学生の頃、仲の良かったバイオリンやピアノが得意な女の子がいた。
父親が一等航海士でいわゆる豪華客船の船長で海外を航海している方だった。俺は女の子に俺も大きくなったら一等航海士になると誓った(笑)。
その後、彼女は親の都合で九州は熊本県に引っ越す事になり転校していってしまった。
それから数年の時が経ち、俺は学生時代学年で成績トップだった為、高校には特待生として学費全額免除で入学し水泳も3歳からスイミングスクールに通っていたので公式の大会で銅メダルを貰った事もあり、間違いなく大学は商船大学に入り夢を追いかけようと思っていた。
学業の成績と水泳が優れていなければ進学できなかったのだ。それともう一つ、視力が良くないと入学できないという事を知ってしまった俺は、視力が悪い為に夢は散り去った。
高校も一学期で退学し元々不良だった俺は、ますます不良に磨きがかかった(笑)。
そんなある日の事、何年も前に転校してしまって以来音信不通だった彼女から1通の手紙が来た。内容は、俺の素行不良の噂が東京の女友達から耳に入ったらしく…怒りの手紙だった。
「哀川君が今、地元で恐れられているのは哀川君自体が怖いのでは無く哀川君と哀川君の周りを囲んでいる団体を含めて恐れているだけなんだよ!視力が悪いからって夢が叶わないからって何でそんな道に歩む必要がある?甘ったれてんじゃねえよ!私は今、熊本で少林寺に入門して県大会じゃ1位だ!喧嘩なら哀川君に負ける訳は絶対に無い!東京に行く機会もあるから勝負して曲がった根性を治してやる!。」とまぁこんな内容だったと記憶している。書き方はもっと凄く、まるで少林寺からの果たし状の様だった(笑)。
まさか、女の子相手に本気で勝負する気も無く、極真空手や柔道経験者には勝った事はあるが、少林寺は基本的に相手の力を最大限利用する武術、下手すれば俺は彼女に喧嘩で負ける事になるのだ。
ここは、相手にする事無く無視が一番だと思い、彼女とは連絡は取らなかった。
あんなに可愛い娘が…バイオリンやピアノがうまかったあの娘が…少林寺かよっ!
県大会一位かよ!誰しも時の流れと共に変わるんだなぁと、しみじみ感じた果たし状でした笑!
エピソード122(アクション走行)
同じ一家内の組違いの兄ぃにアクション走行好きな人がいた。
ある日の事、何の用だったかは忘れたが俺がその組のトヨタセンチュリーを運転する事になった。俺は普段はベンツ560や500やらアストロ等、車体の大きな車にも乗り慣れてはいたが、一番の愛車は日産フェアレディZだった為に何の車を運転してもスポーツ走行になってしまうのだ(笑)。
その日もセンチュリーを何気なくスポーツ走行で走らせた。
すると、乗せていた兄ぃは「おぉっ!いいねぇ〜っ!俺そーゆー運転する奴が好きなんだよ!もっと過激に走行してくれ!。」と言い出した(笑)。大した事はしていないのだが、要は車線変更する時もわざと急ハンドルを切ってカックン走行しただけなのだが…その兄ぃは子供のように無邪気に乗ってる間、ずうっと喜んではしゃいでおりました笑!。
ちなみに、俺はどんな無理な注文の運転の要求をされても大丈夫なように、3年B組金八先生でおなじみの荒川土手で深夜パワードリフト走行や車を真横に走らせる練習までしてました(笑)。

エピソード123(拘置所内通信手段)
御存知の方もいらっしゃるとは思いますが、拘置所で収監されている間や留置場で収監されている間、接見禁止ではないかぎり手紙を書くという自由が与えられています。
その手紙も、同じ拘置所内にいる共犯だろうが、有名人の犯罪者だろうが、例えば東京拘置所だったら収監されている者達は全員住所が同じなので名前さえ間違えなく書けば相手に届くのです。
俺も、ある事件で共犯のCさんに手紙を出してお互い刑が確定するまでの間、手紙のやりとりをしていました。当然、手紙の内容は刑務官に検閲されて内容に事件に関する事や不適切と思われるものや暗号めいたものに関しては却下されてしまうのです。
そこで頭をひねって、どんな内容ならOKがでるか考えながらの手紙を書くのは大変でした。
他の共犯者に関する事は当然イニシャルで書いたりするのですが、隠語を考えるのが難しく厄介でした。
同じ部屋の中に組を裏切った奴がいて、組から電報で「出たら良いものあげるから楽しみにしてろよ」な〜んてのを送られて真っ青になっているのを見て、脅迫状もうまく書けば送れるんだなぁと感心した事もありました。
エピソード124(雑記帳)
刑務所内では色々と物品は買えるのだが、その中で雑記帳というのがある。
要はただのノートなのだが、何でも書き込んでも良いノートのことである。
何でも書き込んで良いといっても一応定期的にノートに何を書いているか検閲される為、滅多な事は書けない(笑)。
禁止事項もあり、刑務所内で知り合った者同士が娑婆に出て連絡を取り合ったりさせないようにと、お互いの住所や名前や電話番号は一切書いては
いけないのだ。でも、やはりお互い連絡を取り合いたいという人もいるのは当然だ。そこで色々知恵をしぼるのだが、俺は漢字の練習をしているふりをして漢字の中に電話番号を書き込んだのだ。まぁ、これは一番オーソドックスでバレにくい。
例としてあげるなら電話番号が東京03−3889−3210だったとすると、漢字の画数を数字に置き換えてゼロは無いので丸という漢字を使い、結果↓
東京丸土干青枚栄大人一丸って事になる(笑)。
これを娑婆に出てから解読して連絡を取り合うのだがなんせ、何年も経ってからお互い連絡を取り合うので現在使われておりません番号が多い(笑)
エピソード125(偽シャブ)
横浜ある夜のこと兄ぃ達3人でコンビニにいたところ、覚醒剤の売人と間違われたらしく中年夫婦に「ありますか?」と声をかけられた。当然、他所の縄内で俺達が売をやっているはずもなく覚醒剤の持ち合わせなんてなかった。
ところが、一人の兄ぃが「あぁ、ありますよ。少し待ってて下さいね。」と答えた。はぁ?この人、シャブ持ち歩いてんのか?と思ったら兄ぃはコンビニの中へと消えた。そして、なんと…ホールズというアメを買ってきてアメを砕きだしたのだ(笑)。砕いたアメをチャック付きのビニール袋に入れて…すると不思議な事にどこから見ても正真正銘シャブなのだ(笑)。
ちょっとコンビニで買ったアメが10分後には2万円に化けたのだった。
喜んで中年夫婦は横浜の夜の街へと消えていったが…アメだという事にいつ気付いたのだろうと考えると笑える。