エピソード156(電話の応対金融編)
極道だった俺は当然の事ながら本部当番に入り電話の応対もしていた。まぁ、極道の事務所らしくドスの効いた声で「〇〇本部!」と相手を威圧するような声で応対していた俺が昼間は都心オフィス街で金融業の受付もしていたのだ。
そこは極道の事務所ではないので「はい、ア〇ムでございます。」みたいな良くある一般消費者金融のような、いかにも親切丁寧な優しい人を演じて電話の応対をしなければならなかった。
しかし、その電話には組内の兄ぃや俺の知り合いのクラブのネエちゃんからもかかってきた。
でも、電話に出る時は自分でもどっから声をだしているんだと思うほどの声で出た。
そうすると、決まって兄ぃやネエちゃん等は大笑いした。そりゃそうだ、相手が「哀川さんいますか?」って聞いてきたら急に声が元のドスの効いた声に変わるんだから(笑)。
ちなみに金融業は貸付相手に逆恨みされて色々調べられてもいいように大抵は客には偽名を教えている。
だから電話で俺の名前を言ってくるのは身内しかいないとすぐに分かったのだ。
名前を変え、声を変え、歩き方を変え、いつも笑顔満面で…二重人格になるかと思ったよ(爆)
エピソード157(留守番電話)
東京の幽霊の出るマンションで一人暮らしをしていた頃、留守番電話に留守メッセージを自分の声で吹き込んでいた。
「はい、哀川です。只今一億光年先の星に旅に出ている為、しばらく戻りません。etc」というような内容だったのだが…。
ある日、夜中に兄ぃが俺の家を偵察するように訪ねてきた。何の用事ですか?と訪ねると兄ぃは言いづらそうに「あのな、兄貴が哀川はシャブやってるかもしれない心配だから見て来いって言うから…。」俺は何故?そんな事を兄貴分に疑われなきゃなんないんだ?不思議に思い訪ねてきた兄ぃに
尋ねた。兄ぃはまたもや言いづらそうに「いやぁな、俺も哀川はシャブなんかやる男じゃないって兄貴に言ったんだけどな…兄貴が哀川の家の留守番電話の内容がおかしいって言うもんだから…。」ギャグで入れたつもりがシャブで頭がおかしくなったと疑われたらしい。
その後、すぐに兄貴分の家を訪ねに行くと、兄貴分が姐さんに、「こいつの家の留守番電話、一億光年がどうとかって訳わかんねぇんだっ!。」と笑いながら半分キレておられた(笑)。仕方が無いのでその後、留守番電話に自分の声で吹き込むのはやめた(笑)
エピソード158(クリスマスの伝説)
ある留置場で、皆様もう記憶から消えかかっているかと思われる世間を騒がせた詐欺グループ豊〇商事事件の有名人物と仲良くなった事がある。
看守からお前等二人が娑婆で組んだら恐ろしいとまで言われていたのだが…(笑)。
長い懲役に行く事を本人は覚悟していたのだろう…。事もあろうか留置場内でボールペンをまるごと飲み込んで腹痛を訴えたのだ。
痛みは想像を絶するものだったと思う。しかし警察も甘くはなく何かを企んでいるかもしれなかった為、すぐには病院に連れて行くことはしなかったのだ。監視を怠ったという事でマスコミに嗅ぎつけられる事を恐れたのかもしれないがとにかく激しい痛みで本人は毎日のように気が狂ったように大声でわめいていた。
その声がうるさくて眠れないとか、アイツは頭がおかしいとか皆文句を言っていたが…。俺は、この人は知能犯だから何か理由があっての事ではないか?と思っていた。
結局、ボールペンを飲み込んでから半月程が経ってからその人は病院に運ばれる事になった。が、しかし病院に連れて行かれる事こそが病院から脱走をするという最大の目的だったのだ。彼は病院から脱走し盗んだ車と思われる乗用車でT県からS県まで逃亡し、途中で花束とクリスマスケーキを買い当分の間、会う事の出来ない家族のいる自宅に届けた所を逮捕され留置場に戻ってきたのだった。
無事、ボールペンの摘出も済み目的を果たした後の彼は看守に悪態をつく事も無く紳士的な今までとは違う別人のような人間になっていた。
クリスマスに家族にプレゼントを渡す為に計画的にボールペンを飲み込んだ伝説!?の男が今何をしているのか知らないが…きっと裏社会で暗躍している事と思う。
エピソード159(シャブ中)
覚醒剤取締法違反の容疑者が警察の留置場に収監されると、まずクスリが体内から抜けきっていない為に拘留中しばらくの間はコイツ頭おかしいんと違うか?と思うような言動をするので周りの人に多大な迷惑をかける者が少なくない。
ある留置場で一緒になったY氏なんかは俺の入っているオリから3つも離れたオリの中にいるのに大声で「哀川さ〜ん!今の政治についてどう思いますか?俺はここを出たら立候補するんですけどやっぱり自民党がいいですかねぇ?橋龍をどう思いますか?。」などなど真剣に政治について熱弁しだすのだった。留置場内にある漫画を読んで現実と妄想の区別がつかなくなってしまったようだった。「本気」などで有名な立原あゆみさんの漫画、
「花火」だったかの主人公の影響を受けてしまっているようだったので可哀相にと思い、俺はしばらく政治について大声で語り合った(笑)。後で、風呂の時間に一緒になった他の人に「哀川さんも相手しなきゃいいのに…優しいなぁ笑!。」と言われてしまった(笑)。
いやぁ俺も留置場内で政治について熱く語る羽目になるとは思いませんでした(爆)
エピソード160(偽者)
俺の地元で駅前や繁華街で偽哀川力が出没した事が頻繁にあった。俺自身、喧嘩の際に名乗る事をあまりせず、俺の名前さえ知らないだろうに俺の顔を見ただけで、挨拶してくるなんて奴も結構いたのだが…反対に俺の顔は知らないけど名前は知ってるなんてのも結構いて、この哀川に駅前でカツアゲされただとか、そんな苦情が相次いだ時期があった。人づてに俺に会ってカツアゲ犯かどうか顔を見に来る奴までいて一番笑えたのはカツアゲされた本人が俺の顔を見て「哀川って人この人じゃありません。」と言った事だった。俺が哀川本人だっ!と言ってあげましたが(笑)。