エピソード161(足の引っ張り合い)
一般社会でも極道社会でも組織を盛り立てていく上である程度の協力はするが、やはり競争社会であり足の引っ張り合いも結構ある。
俺のように行儀見習もせずトントン拍子でその道を突き進んでいくと、やはりある事無い事デタラメなデマを流されたり嫌がらせもされた事もある。
全く口にしていない内容の話を、さも俺が言っていたかのように上の人間に報告され本部事務所に呼び出されブン殴られた事もある。まぁ誤解はすぐにとけるものなのでいいのだが、一度自分の舎弟に裏切られて反目(ライバル)だった人間のシノギを手伝い俺や兄貴分のシノギをおろそかにして結局反目だった人間に利用されるだけ利用されて後になって泣きついてきて、兄貴分が話をつけて下さったにも関わらず2日後には引っ越して行方をくらましてしまった時にはガッカリした。
上の人間からは「おい!哀川っ、アイツはどうしたんだ?必ず探し出せ!」なんて当然言われるし…。仕方が無いから賞金首かけて街の不良達を総動員して自分のメンツを保つ為、3週間かけて探し出して凹ませてやりましたが…。
ある団体の組長が言ってました「極道何が怖いかって、一番怖いのは身内の足の引張り合いだよ。」と。極道社会、足を引張られて一歩間違えれば命取りですから…大変な稼業です。
エピソード162(クリスマスカード)
あまり思い出したくは無い思い出なのだが、ある留置場でクリスマスを迎えてしまった時の事…、俺宛に大嫌いな女からクリスマスカードが届けられた(笑)。
看守から「おい!哀川っ例の女からクリスマスカードだっ。」と手渡され開けてみるとオルゴール付きのカードでクリスマスソングメロディが流れた。
大嫌いな女からだったので俺はいらなかったのだが、周りで見ていた若い20代の野郎どもは何故か?みんな自分がクリスマスカードを貰ったかのように喜び、看守にしばらくカードをメロディを流したまま飾っておいてくれと頼み出す奴までいた笑。
看守も渋々「しょうがねぇなあ哀川がいいのなら皆の為に飾っておいてやるよ。」と言い出し仕方が無いから俺もOKして皆から見える位置にクリスマスツリー型のカードは飾られた。そして俺以外の若者はオリにしがみつきクリスマス気分を味わっていた(爆)。
真剣な眼差しでカードを見つめる野郎どもの後姿を寝そべりながら見ていた俺は何だか笑ってはいけないのだが笑えた。
エピソード163(お飾り)
年末が近くなると思い出す。正月用のお飾りや盆栽や門松やらの注文を取りに自分の縄張りの主に水商売系の店をまわった。客注の分は普通に仕入れて納品するだけなのだが、一般客に路上で売るお飾りはどのくらい売れるか分からないので大体の予想をして各縄張りに振り分けられる。
ところがある年の年末の事、暴対法が施行されて直後の事だったので路上での暴力団による販売は摘発すると警察から通告があり、本部事務所のそばではお飾りを売ることにして俺の縄張りでは店を出さない予定になった。
どっちにしろ寒い中、外で売るわけだから中止になって良かったなんて言ってる兄ぃ達もいた。
ところが、年末直前になって親分が「バカ野郎!お飾りは縁起もんだっ!通常通り各縄張りで店を出して売れ!。」とおっしゃられたのだった。
さて困ったのは俺達だった。お飾りの仕入れは1店舗分しかしていなかったし直前では仕入れも無理だった…。
すると他所の縄内の組長が一言「そういやぁ哀川んとこの事務所に去年の売れ残りがあっただろう?それ使えよっ。」俺は内心、縁起もんが去年の売れ残り?マジかよ?と思ったが、結局売ることになった。よ〜く見ると色が古いホウキみたいに茶色がかっていたお飾り…完売致しました(爆)。
あれを買ってしまった人達のその年の運勢はどうだったんだろう?と未だに申し訳ない気持ちで反省しております(笑)。ちなみに売った俺の運勢は未だに低迷し続けておりますが…笑!
エピソード164(ボロい事務所)
ある日、本部事務所で兄貴分と二人でくつろいでいると監視用モニターに数人の兄ぃ達が物凄い形相で一人のチンピラを引きずって来るのが映った。
ドタバタと事務所に入ってくるなりチンピラを引きずりながら2階に上がっていった。
しばらくして怒鳴り声と地響きがするような大騒ぎになった。2階で何が起きているかは見当はついていたので兄貴分と俺はニヤリとしながらそのままくつろいでいたのだが…2階に上がっていった兄ぃ達は皆身長180センチ以上の巨体クラスばかりだったので、そんな人達が暴れているのだから1階にいた俺達には物凄い振動がするのだった。
俺なんか、こりゃあヤバイなぁ事務所の外に逃げようかとも思ったその時だった…
兄貴分が大声で「お前等!いい加減にしろっ!天井が抜けるだろっ!うちの事務所はボロいんだっ!」結局ズタボロにされた他所のチンピラを連れて下に降りてきた兄ぃ達に兄貴分は一言・・・
「お前等よぉ、自分達の体重考えて暴れてくれっ!」俺は爆笑しそうになるのを必至に堪えていた。
俺がいた当時の本部事務所はホントにボロかったのだ…今では新築され忍者屋敷のようなカラクリ仕掛けの要塞事務所のように立派な建物になっていますけどねっ(笑)。
エピソード165(話題になった人達)
東京拘置所には世間を騒がせた有名な犯罪者達が集まっている。その様な有名人は注目の的になってしまい騒動の原因にもなる為、一人部屋(独居)で生活する事になるので我々普通の犯罪者達は会う事もないだろうと思っていた。
しかし、面会所や護送車の乗り場や様々な所が共有されている為に出くわしてしまうのだ。宮崎ほにゃららや、三浦ほにゃららや…一番笑えたのは、パイロットに変装して女性を騙していた結婚詐欺師とかいう奴を見た時だった。護送車に乗る順番待ちで並んでいたら偽パイロットがいたのだが、確かに髪の毛を金髪っぽく染めていて日系アメリカ人に扮装していたという面影は残っていたが、並んでいた多くの人は口々に「ばりばり日本人じゃん!ありゃ金髪の変なオッサンにしか見えねえよ。」と言ってクスクスと笑っていた。
俺も笑いそうになるのを堪えて、よ〜く顔を拝ませてもらったが(笑)確かに新聞やテレビにでていた本人だったが…しっかし良くこの顔で女性を騙せるもんだと思いつつ、てかこんなのに騙されんなよっ!と呆れ果てた(笑)。