エピソード211(実話ドキュメント)
塀の中の受刑者と娑婆の人との手紙のやり取りは原則として両親または配偶者のみとなっているので、その他の友人や知人との連絡は一切禁じられているのだが・・・。
御存知の方もいらっしゃるでしょうが月刊誌「実話ドキュメント」という極道系雑誌の中で「塀の中のあの人へ・・・」という一般の娑婆にいる人から塀の中にいる受刑者へ宛てた文章を紹介しているコーナーがあるのです。
本来、図書係の担当の刑務官が雑誌などの中身をチェックして例えば俺が服役していた青森刑務所ならば「青森刑務所の第2工場のAさんへ」なんて内容の文章が雑誌に掲載されていた場合、そのページは全て閲覧禁止の措置がとられてしまうのだ。
しかし・・・なんとその検閲を潜り抜けた事があった。
「東北A刑務所第2工場のみんなへ」という題名で俺と同じ房に居て先に出所したT県のS会系のBさんからの手紙が紹介されている記事が受刑者のみんなの手元に届いた。
記事の中に「A君、約束の金を差し入れしておいたからな」と俺へ宛てた文章もあった(笑)
この事実を見て見ぬふりをするほど刑務所は甘くなかった。まぁ幸い俺達には何のお咎めも無かったが、図書係の担当刑務官は減俸処分となってしまったのだ。担当刑務官は結構いいおやっさんだったのでなんだか可哀想な気もしたが・・・。
まさかそんな内容の文章が雑誌に掲載されているとは夢にも思わなかったのだろう。なんせ読んだ俺達がビックリしたくらいなんだから(笑)
。ハイっ

エピソード212(伝書鳩)
塀の中から外に居る者へ伝言を出所していく者に頼んだりする事を「鳩を飛ばす」という。
この行為そのものが禁じられているのだが実際は多くの者がやっている行為である。
この鳩を飛ばす行為、間違って変な奴に頼んでしまうと先に娑婆に出たソイツに頼んでもいない事までされて大変な事にもなるので、よっぽど信頼できる者に頼むしかない。
仮に頼んだとしても塀の中では「あぁ、いいよっ!」と気楽に返事してくれた者も、いざ娑婆に出ると自分の生活などが精一杯で頼まれた事を必ずしもやってくれるとは限らないのであまり期待もできない。
そういう俺もある伝言をY組S会の若頭に頼んだのだが・・・正直言ってあまり長い間一緒に同じ房にいたわけではなかったので期待はしていなかった。
頼んだ内容は仮釈(仮釈放)を貰って早く娑婆に出たかったので身柄引受人に本来なるはずの親に連絡を取ってくれというものだった。
結局、俺は身柄引受人がいないという理由で満期出所したのだが、娑婆に出てから父親のところへ顔を出すと「おい、お前Y組に知り合いがいるのか?その人から電話があって、なんとかお前の為に身柄引受人になってやってくれって頼まれたけど断ったぞ・・・。」と父が言った。
なんだか俺は嬉しかった。結果は俺の父が断ったから満期出所になったけどY組といえば関西が本拠地、関東の俺の為に、お互い連絡先を教え合ったわけでもなく娑婆に出てから付き合い事をする約束を交わしたわけでもないのに・・・ただ嬉しかった。

エピソード213(隣りの変質者)
塀の中では当然の事ながら凶悪犯からコソ泥まで様々な犯罪者が同じ所で生活する環境になる事が多々ある。
もちろん同性愛者が同じ部屋になったりする事も良くあり、隣の者の尻を触ってニヤニヤしている者や更衣室でパンツを履いたふりして看守の目を盗んでチン○だけだしてハァハァしている変な奴、人の耳元に息を吹きかけて喜んでる奴・・・まぁおかしな野郎がたくさんいたが、とっておきの変質者と同じ部屋になり隣で寝る事になった事がある。
彼の犯した犯罪は幼女や小学生にナイフを突きつけ悪戯をしていたというものだったのだが、同じ部屋に居た者達に聞かれるがままに嬉しそうに自分がやった犯罪を話していた。
そんな変質者の彼に、俺は「休みの日とかは何してるんだ?」と尋ねると・・・
スーパーマーケットなんかの女子トイレにコンビニで買った弁当やウーロン茶なんかのペットボトルを持ち込み、今は無いかもしれない形式だがトイレとトイレの下の隙間から一日中覗いて喜んでいるというのだった。
これだけで驚くのはまだ早い!俺が「お前みたいな奴、彼女なんて出来た事も無いだろう?」と尋ねると彼はこう言った・・・
「彼女はいたんですが付き合ってる時に彼女が自分の家でトイレに入ってる時にドアを開けて手錠をかけて・・・それが原因でふられました。」
絶句ものの変質者な彼は当然の如く同囚からの猛烈なイジメに合い独居へと転房していった。
しかし、1週間ぐらいだったがそいつの隣りで寝るのは、ある意味怖かった(笑)

エピソード214(人がおとなしくしていれば・・・)
懲役生活は何と言っても人間関係をどううまくやっていくかが最大の鍵であり、違反行為や同囚との喧嘩など避けて通れるものなら回避して真面目に務めていれば、俺のように身柄引受人がいないとか引き受け収容施設が無いという可哀想な(笑)人でない限りは仮釈放というのが貰えて実際に言い渡された刑期よりも何ヶ月も早く出所できたりするのだ。
まぁ、仮釈を期待して真面目にやるという他にも進級制度というのがあって進級すればバッジの色が変わり映画などが見れる集会(菓子ジュース付)に級の低い者よりかは多く参加できたりする特典もある。
まぁ、そんなこんなのルールの中で生活しているので無意味に虚勢を張って他の者になめられちゃいけねぇなんて事はせず俺は割かしおとなしくしていたのだが・・・それはそれでチョッカイを出してきたがる野郎もいるから困ったもんだ(笑)。
ある日の運動の時間、雨が降っていたので体育館のような講堂の中で爪を切ったり腹筋をしたりしていると、I会の者が「おい哀川っ!ちょっと話があるからこっち来いよ!」と俺を講堂の隅っこに呼び出しやがった。で、何の用かと聞いてみれば要するに俺に喧嘩を売っているらしかった。
まぁ、さすがに売られた喧嘩を買わないのも癪に障るので頭にきた俺は「てめぇ誰に口聞いてんだっ!この野郎っ!!!」すぐに看守の目がこちらに向いたが・・・なんせ喧嘩を売ってきた若衆は腰が抜けたようにその場にへたり込んでしまった(笑)
普段、俺がおとなしくニコニコして生活していたので怒った時とのギャップが凄かったのだろう・・・。
怒りに火がついてしまった俺はトドメをさしてやろうと思った瞬間、S会とY組の両方の方々から止めに入られてしまい、あいつはアホなんだから相手にしたらいかんよっと説得され結局その場でI会の若衆と和解の握手をさせられた(笑)
その後はその喧嘩を売ってきたI会の若衆とも仲良くなり、俺より先に出所する事になった彼は俺に「もし良かったら哀川さんが出所する日に迎えに来ましょうか?地元だから観光案内しますよ。」などと言ってくれたが俺には迎えの先約があったのでお断りした。
で、結局迎えに来てくださる筈の先約の方は・・・俺より1週間早く出所したにも関わらず覚せい剤取締法違反で速攻で逮捕されてしまっていて俺を迎えに来れる筈もなかった(笑)。
まぁこれを読んだ方で今後懲役を務める方は人間関係・・・大変かと思いますが頑張って務めてきて下さいo(^-^)o

エピソード215(嫌な再会)
ある事件で逮捕され収監され起訴後に警察署から東京拘置所に移送されたときの事。
まず東京拘置所に着くと荷物検査やら尻の穴まで調べられる身体検査があり自分の番号を呼ばれるまでビックリ箱という狭い木でできた電話ボックスのような所に閉じ込められる。
そんなこんなで荷物検査や身体検査が終わりかけた頃、整列し罪名と生年月日を自分で読み上げる為に待っていると俺の後ろに並んだ中年のおじさんが腰をツンツンと突付いてきて「久しぶりだな・・・」
え?誰だ?こんな所で?こんな太ったおっさん知らねぇよ!と思いつつ良く顔を見たら俺の共犯だった(笑)面影は少しあったがずいぶん太っていて一瞬分からなかったのだ。
「あの件はまだバレてないのか?」とか短い会話を済ませ、内心俺は嫌な人に会ったなぁと思いつつ・・・まぁこれで二度と会うこともないだろうと思っていたら東京拘置所から各刑務所に移送される前日、またバッタリ出くわしたのだ(笑)
S会を破門になったとか言っていた彼だったが小声で俺に「出たらまた逢おうなっ事務所に遊びに来てくれよ。」と言った。
うんと頷きながら俺は内心「また一緒にパクられるのは御免だぜっ」と思いながらそれぞれ別の刑務所に移送され、その後は逢っていない(笑)