エピソード216(暇潰し)
刑務所の中での生活の中で平日(月〜金)の日中の各工場での作業を除き舎房に戻ってからや休日の暇潰しには読書に限る。
極道の者達が一生懸命にケーキの作り方や餃子の作り方などの専門書を黙々と読んでいる姿には笑えるものがある。娑婆に出たら足を洗って料理人にでもなるのだろうか?と思わずにはいられないくらい熱心に読んでいる方々もいた。
本は雑居に居る限り各自の本や雑誌を回し読みしても良いので俺も多くの本を読ませていただいた。
その中でも特に面白く娑婆に出てから最近インターネットショッピングで購入した本がある。
宝島社文庫の溝下秀男氏著「極道一番搾り」だ。
この本は池袋のS会系の若衆さんから薦められて読んだものだが本当に笑えた。
様々な小説やエッセイ、歴史物をたくさん読んだが娑婆に出たら全然本なんて読む機会を作ろうともしない俺には塀の中は格好の読書の場のようだ(笑)

エピソード217(刑務所の食事)
昨日、名古屋で皆様御存知の方も多いでしょうがGackt氏のコンサートがあったのだが・・・。
その中のMCでGackt氏が、そのホールで出たらしい弁当を「刑務所で出てくるような味噌カツやらウィンナーが入った・・・」と(刑務所)を4〜5回ほど発言なさったそうだが、俺の経験した刑務所では味噌カツやらウィンナーなんて豪華な飯は出なかった。辛うじてウィンナーは1cmほどに切ったやつがクタクタのキャベツと一緒に煮たんだか炒めたんだかわからないような形でテーブルに現れてソースをかけて不味いのを我慢して食べた記憶がある(笑)
味噌カツやウィンナー、まぁ味噌付きは出ないだろうがカツやらは少年刑務所なんかでは食べた記憶がある。
Gackt氏・・・いや御本人ではなく取り巻きの方で少年刑務所を御経験の方がいらっしゃるのではないか?と思った(笑)。ちなみに氏は味噌カツの味噌が嫌いだそうだ・・・俺も大嫌いだが(笑)

エピソード218(敵か味方か?)
つい先日の事だが、交通事故にあった。過失はおそらく8:2か7:3でこちらの有利なのだが…。
怪我をした俺に相手は保険屋を使わず治療費だけ自腹で払うけど慰謝料も休業補償も払わないと署名捺印を拒んだのだ。
こりゃ困った!しかし世の中は便利なもので任意保険に入っていれば人身傷害保険というやつに大抵の保険は自動的に入っているらしく、自分の保険会社が対物は除いて全てを保障してくれるというのだ。
が、しかし…今までは味方だと思っていた自分の保険屋がいざ相手の保険会社ではなく自分のところが取り合えずにしろ負担しなければならないとなると客であるはずの俺に払い惜しみをしだす始末。
医者に診断書を書いて貰ったとしても、内容が事故との因果関係が深いかどうか保険会社のほうが判断して認められなければ治療費をお支払いするわけにはいかないだとか…診断書が全治10日なら1ヶ月くらいの通院で完治するようにしろだとか…。
オイオイ!プー太郎じゃあるまいし仕事しながら必ず毎日通院できるわけじゃないのに鞭打ちなんかが1ヶ月で完治するわけないだろっ!
まぁ自分で保険料払ってる保険会社に治療費、休業補償、給付金、慰謝料の全てを払って貰うのも変な感じがするが、せめて俺はお前んとこの客だぞ!もうちっとまともな対応せんかいっ!と言いたくなるくらい…味方か敵か訳分からん状態な毎日を最近は送っている(笑)

エピソード219(上下関係)
塀の中での受刑者同士の中には当然上下関係が存在する。簡単に言うと偉いのが極道(笑)
で、その中でも組長クラスは当然発言権があるのだが・・・組長とはいえ間違った事も発言されるのだが同じ極道ましてや同じ組の系列だったりした場合、その発言に対し「そりゃ違いますよ!組長!」なんて具合に訂正したりする事はまず無い。
俺なんかも北関東某組の組長に「哀川ちゃん!足立区なんだって?足立区って言えば昔は埼玉県だったんだぞっ!」と言われ、はぁ?何言ってんだこの人?と思いながら一応「あのぅ足立区は今も昔も東京23区だと思うんですが・・・。」と反論虚しく「知らないんだろ!確か哀川ちゃんが生まれるずっと前は埼玉県足立とかって言ってたんだぞ!」
こうなるとそれ以上反論する気にもなれず「あぁ、そうなんですか。」と答えるしかない(笑)
周りに居た極道達も何も言えず沈黙状態・・・しかし、堅気は違う!相手が組長だろうが何だろうが関係なく「何言ってんですか組長!それは埼玉県足立郡の事で足立区とは全然違いますよ!ほれ見てみて下さいよっ!」と丁寧に地図まで出して説明して勝ち誇った顔をしている(笑)渋々組長も「あぁそうかい。」俺は内心「あぁやっと足立区が東京23区に戻れたよ(笑)」と思った出来事があった。
そうかと思えばある日の事、組長がジュースの話をしだしたのだが・・・果汁100%がどうだのこうだのと延々と話が続き皆聞き入ってたのだが、10回以上「果汁(かじゅう)」を「果汁(かじる)」と発言されるのだった・・・皆笑いたいのを堪え本人のいないところで爆笑した事もあった。「かじるがよう、あのジュースはかじる30%しか入ってなかったけどかじるってのはよう・・・」かじるかじるって・・・本人は思い込みで大真面目で話してるのだから誰も50歳過ぎの組長に訂正しようがなかった(笑)
まさに白い物でも親が黒といったら黒になってしまう塀の中だった(笑)

エピソード220(日本Sウェルター級1位)
ボクシング現、日本Sウェルター級1位の刺青を消した元極道ボクサーの彼も同じ組だったのだが、ある日の事なにかの用事で一緒に車で移動中に運転していた俺がクラクションを対向車に鳴らされカチンッ!ときて「頭に来た!」とつぶやいて車を降りていこうとしたら彼は「やめましょう!相手は堅気さんですよ哀川さん・・・。」そう相手は堅気さん・・・この一言で我に返った俺はおとなしく車をバックし道を譲ってやった。
彼は俺より年下だったが極道歴は俺より長かったので礼儀正しく立派な男だった。来年1月にはチャンピオンと対戦するらしく陰ながら応援しようと思っている。
俺も先週見たのだが、毎週日曜日の朝の徳光さんの番組で8:30過ぎぐらいに彼の現在所属するボクシングジムが特番を組まれて追っかけ取材みたいに放映されているので暇のある方は御覧になってみてください。